近況報告

長い間、ブログが書けないでいました。11月2日以来ですので、かれこれ半年近くにもなります。その間、何をしていたかというと闘病をしていました。
悪性リンパ腫という血液のガンにかかってしまい、昨年8月末から12月末まで8回にわたる抗がん剤投与による治療を受けていました。その結果、1月のPET検査で完全寛解と診断されました。
悪性リンパ腫は効果的な薬が開発され、今や治癒率の高い病気に分類されると思います。世の中には治療法も確立していない難病が存在していることを考えれば、効果的な薬が開発されたという事は本当にありがたいことです。しかも、私の場合、2期という早期発見であったこともラッキーでした。
とはいうものの、この間の抗がん剤治療はやはり辛いものでした。眠れない、食べれない、疲れやすいという症状に悩まされます。さらに、ケモブレインという呼び方があるそうなのですが、何とも集中力がなくなり、じっとしていられないという症状が私の場合出ました。
でも本当に辛かったのは完全寛解と診断された1月以降だったように思います。寛解しても副作用の影響はまだ残ります。また、副作用の出方も人それぞれと言いますが、私の場合、神経というのか、心というのか、メンタルをやられてしまいました。
投与期間の終盤あたりから、不安の虫に襲われるようになってしまったのです。眠れない夜や、目が覚めてしまった明け方が危険でした。不安に襲われて胸苦しくなるというのは自分の意志ではどうにもなりません。それで、抗不安薬を処方してもらったのですが、私にとってはそれもよくなかったようです。抗不安薬は即効性があり、すぐに楽になるし、夜も寝付く効果があるのですが、即効性があるという事は依存性も高いという事です。依存しすぎないように、自分で1日2錠までと決めてはいたのですが、薬が切れると苦しくなるような症状になり、通っていた病院の腫瘍精神科を受診しました。抗不安薬はやめることになり、別の薬になったのですが、薬を変えたあたりが一番つらかったです。
その後、もう数か月がたち、4月も下旬になってしまいました。肉体的には血液検査の結果も特に問題く、回復してきました。しかし、心を病むと長くかかるものですね。だいぶ良くなってきたとはいえ、まだ、一人で家にいるときに時間がやり過ごせず、辛い時がしょっちゅうあります。

このブログで、古い映画の掘り起こし手をして、若い世代がまだ生まれていなかった頃の映画の紹介をしてきましたが、映画が見られなくなってしまったのも辛いことでした。映画どころか、まだ、ストーリーのあるテレビドラマをじっくり1時間見ることができません。途中で辛くなるという事もあるし、我慢して最後まで見てしまって気持ち悪くなったりします。
何なのでしょうね。本は自分のペースで、30分くらい読んで疲れたらやめる、というやり方で、少しずつ楽しめるようにはなってきました。
だいぶ回復してきたとは言うものの、まだまだ病気の前の状態には戻っていません。
ブログも再開してみようという気がおきて書いてはみたものの、今後、頻繁には書けないと思います。でも、少しずつ、自分の思い、病気になって分かったことなどを書いていこうと思いました。
そして、また、映画を見ることができるようになったら、お奨めの作品を紹介したいと思います。

『ラ・ラ・ランド』

つい最近、2人の人から『ラ・ラ・ランド』がよかった、と薦められました。
一人は私の生徒で、もう一人は私の高校時代以来の友人。
年代から何からまるで異なる2つの方向からほぼ同時に薦められたので、「これは見なくては。」という気持ちになりました。

というわけで、近所のイオン・シネマに行ってきました。

よかった!!です。

若い世代がこの作品をみたら、自分への応援歌のように感じるかもしれません。
私のような世代からすると、若かった頃、夢に向かって突き進んだり、思い通りにいかずあがいたりしながら、必死に生きていた時代を懐かしく思い出したりします。

*****   *****   *****

ミア(エマ・ストーン)は女優の卵で、何度もオーディションに落ちていています。その度に傷つくし、自信を無くします。この先も、落ち続けるだけで、どこかで女優をめざすことを断念することになるかもしれないし、でも、もしかしたら、いつか抜擢されて大女優の道を歩むことになるかもしれないし。
セブ(ライアン・ゴズリング)も、場末のクラブで人気のないジャズ・ピアニストとして、生活のために自分の好みでない曲を弾かされています。このまま、自分が求める音楽とは違う方向に進んでしまうかもしれないし、でも、もしかしたら、自分のピアノが受け入れられてヒットして、自分の店が持てるようになるかもしれないし。

この二人の恋だって、この先、結ばれることになるかもしれないし、別れが待っているかもしれないし。

先のことなんて誰も分からない。
やってみなければわからないし、やらなかったらそれで終わり。

そして、この映画の結末はどうなるのかな、とワクワクしながらみてしまいました。

******    ******     ******
口コミは信頼できます。素敵な作品でした。
特にダンスシーンが素晴らしい。
冒頭の渋滞した高速道路でのダンスシーンなど、何台もの車と人を動員してすごいなと思いました。
ミアとセブが二人で踊る公園のシーンも素敵。(ダンスがうまいっていいな。)
ミュージカル作品として、とにかく見ていて楽しかったです。

そして、なにより、ラストのライアン・ゴズリングの表情が最高!!!でした。

『ラ・ラ・ランド』
2016年のアメリカ映画
キャスト セブ : ライアン・ゴズリング
      ミア : エマ・ストーン
 

「世界の果ての通学路」 

4月半ばに見た、「世界の果ての通学路」というドキュメンタリー映画について、書こうと思ってかけないうち遅くなってしまい、銀座での上映は終了となってしまった。
(役に立たない情報ですみません。でも、YouTubeで予告編が見られます。
この1分50秒の予告編、一見の価値ありです。)


世界の果ての通学路

「世界には、学校に行くために想像を絶する道のりを通っている子供たちがいる。」

ケニアのジャクソンは(11歳)は、片道15kmの道のりを2時間かけて妹とともにサバンナを命がけで駆け抜ける。
アルゼンチンのカルロスは(11歳)は、パタゴニア平原のなかを、片道18km、妹と馬に乗って1時間30分かけて通学。
モロッコのザヒラ(12歳)は友達とともに岩肌の山道を片道22km、4時間。
(てことは、往復8時間!!通学だけで一日が終わってしまう。学校に行く日は毎日ではないようだが。)
インドのサミュ(13歳)は足が悪く、車いすでの通学。車いすを引っ張り、押すのは、サミュの弟2人だ。

通学途中には様々な困難が待ち受ける。
ジャクソンの通学路の危険は象に遭遇することである。
象の気配を感じたら、迂回してコースを変更し、安全を確保する。
ザヒラの友達は途中、足をくじいたのか、足の痛みに耐えかね、歩けなくなってしまう。
ザヒラ達は、途中、通過するトラックになんとか頼み込んで乗せてもらう。
サミュたち兄弟も、楽な行程ではない。なにせお兄ちゃんは車いすなのだから。
サミュたちは、近道しようとして、川の浅瀬を渡ろうとしたら、深みにはまってしまい、抜け出すのに苦労する。さらに車いすのタイヤが壊れる・・・。がたがたになった車いすをなんとか持ちこたえさせ、町の修理屋さんになおしてもらう。

兄弟、友達、みんな仲が良い。
年下の者や、体の不自由な者の面倒を見るのは、当然だと思っている子供たち。
子供たちは、それぞれ協力し、工夫し、時には大人の助けをかりて、なんとか困難を乗り越える。

親たちがやさしい。
「子供たちが無事につきますように」、「学校まで安全であれ」と祈る親たち。
愛情に恵まれた彼らは幸せである。
物質的に恵まれていなくても、通学が大変であっても、一番大切な愛に満たされている。

子供というものは、親の愛情があって、信頼できる友達がいて、学ぶ環境があって、まともな大人に成長していくものなのだと、改めて思った。


見終わって、ホカホカした気持ちになり、帰り道も幸せだった。

アメイジング・グレイス

生徒のRちゃんから「アメイジング・グレイスって映画を見ましたか?奴隷貿易廃止に活躍したウィルバーフォースの話で、首相のピットも出てきますよ。」と教えてもらった。
Rちゃん、ありがとう。
その映画は、ちょっと前にNHKのBSのプレミアムシネマで放映されていたのだけれど、録画しただけで満足してしまい、実は、まだ見ていなかったのだ。

で、家に帰ってから早速見た。

アメイジング・グレイス
2006年のイギリス映画。
奴隷貿易廃止の法案を成立させようとするイギリスの若き政治家ウィルバーフォースとその親友ピット。

正しいと思って貫こうとしても、それを達成するまでには時間がかかる。

奴隷たちの悲惨さを訴えても、奴隷貿易による利益を受けている連中はそれを手放そうとしない。
議員の多くが西インド諸島で利権を持っている。
農園に投資するものも、船を所有するものもいるのだ。

「奴隷を持たなければ農園もない。農園なしでどうやって財源を確保するのだ。」
「イギリスが奴隷貿易をやめても、それをフランスの横取りされるだけだ。」
反論する議員たち。
個人としては奴隷貿易廃止を支持したくても、地元を代表する立場だからそれはできない、というリヴァプールの議員。

でも、リルバーフォースは負けなかった。


世界史教師の立場から、しつこいけれど、補足説明。

1713年のユトレヒト条約で、イギリスはアシエント(スペイン領アメリカに黒人奴隷を供給する特権)を獲得した。
以後、イギリスは、奴隷貿易、砂糖貿易で莫大な利益を得る。
アフリカ西海岸には武器(イギリス製の銃や刀剣)が輸出され、部族間で戦わせ、捕虜が奴隷としてアメリカ大陸に運ばれたのだ。その黒人奴隷がアメリカのさとうきびプランテーションで過酷な労働を強いられ、砂糖がヨーロッパに輸出される。
武器 ⇒ 黒人奴隷 ⇒ 砂糖  
悪名高い、18世紀の大西洋三角貿易である。

イギリスで奴隷貿易廃止となったのが1807年。奴隷制度が廃止となったのが1833年。
これは、世界史受験生にとっては必須事項。
ウィルバーフォースは山川の世界史用語集に頻度数1で掲載されていた。
つまり、11冊の世界史Bの教科書のうち1冊にだけ、記載があるということ。

日本人にとってはそれほどメジャーな政治家ではない。
が、信念の政治家だ。
ウィウバフォースが、奴隷貿易廃止のための最初の議案を提出し、あっさり否決されたのが1791年。
ようやく法案が可決されたのが1807年。
活動を始めた時期から数えると、成立までに20年かかっている。

その間に、親友のピットもフォックス卿も死んだ。
ことを成し遂げるのは大変なことなのだ。


もう一つのみどころ
ジョン・ニュートンが粗末な修道士の服装で裸足で、教会の掃除をしているところ。
彼は奴隷貿易に携わっていた。そして、無残に死んでいった22万人の奴隷たちの亡霊とともに暮らしている。
彼も苦しいのだ。過去の行いを悔いている。

その対局にいるのが、自分たちの利益のためだったら、奴隷たちが悲惨な扱いを受けていることなど、気にもかけない議員たち。
想像力の欠如だ。奴隷たちがどんな悲痛な思いで死んでいったかを、想像してみることすらしないのだ。

ウィルバーフォースは、タンスの引き出しの中に入ってみる。
奴隷船で運ばれた奴隷たちに与えられたのと同じ大きさの空間だから。
そこに入れられた奴隷たちの気分を味わってみようとしているのだ。

人間には2種類がある。平気な人たちと、苦しむ人たち。
いつの世も同じだ。







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ドクトル・ジバゴ

世界史の問題の中に、20世紀の文化に関する出題で、作者-作品名の組み合わせの誤りを問うているものがあった。
「怒りの葡萄」-パステルナークという誤った組み合わせがあり、これを選ばなくてはいけない。
「怒りの葡萄」はスタインベックの作品で、これは、浜島書店の史料集の文化史をまとめた表のなかで、かろうじて太字。
パステルナークにいたっては、山川の用語集にも、浜島の史料集にも掲載されていない。

だから生徒は知らない。

「パステルナークってだれですか?」
「ドクトル・ジバゴの作者だよ。」
「ドクトル・ジバゴってなんですか?」

と、おおむねこんな会話になる。

すると、同僚の英語教師Iさんが、「ドクトル・ジバゴ}という懐かしい響きに反応してきた。
私と同年代のIさんは、学生時代に、まだ恋人だった現在のご主人と二人で見に行ったという。
そりゃ、思い出の映画だね。

当時、リバイバルというのがあった。
「ドクトル・ジバゴ」は1965年の映画で、私たちの学生時代は1975年前後であるから、リバイバル上映だったということだ。

今は、新しい作品ができて、封切りになったあと、一定期間が過ぎるとDVDになって販売される。
当然、TSUTAYAで借りられる。

昔は、「ドクトル・ジバゴ」という作品を見たいと思っても、リバイバルできた時に見逃してしまったら、テレビの洋画劇場で放送してくれるのを待つしかなかった。

Sくんへ。
今は、TSUTAYAに行けば、100円で借りられるよ。貸し出し中でなければいつでも。
ちょっと長いから、時間に余裕がないとだめだけれどね。
受験が終わったら、借りに行ってごらん。


ドクトル・ジバゴ
1965年、アメリカとイタリアによる合作映画。
米アカデミー賞で、「ララのテーマ」で作曲賞を受賞したモーリス・ジャールをはじめ、5部門を受賞。


ジャンルは恋愛ドラマ。ロシア革命に翻弄される医者のジバゴとその妻トーニャ。そして、ジバゴが心を寄せてしまう美しいラーラ。

映像が美しい。窓ガラスに張り付く雪の結晶。春が来て、雪景色が一変して、家の周り中が水仙の花の黄色に囲まれるシーン。
小道具のバラライカの使い方が素晴らしい。ララのテーマを奏でているロシアの代表的な弦楽器だ。
ネタバレになってしまうけれど、これが最後のシーンで出てきたときに、父から子へ、そしてその子孫へと脈々と続く、人間の営みを感じた。



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プロフィール

萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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