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「走る」映画

抗がん剤の投与が終了してから7か月以上が過ぎた。投与中、集中力がない、何をやっても楽しいと感じられないという症状に苦しめられ、それは、今現在、かなりよくなってきているとはいえ、まだ、以前の状態には戻っていない。
読書はかなり楽しめるようになってきたのだが、映画となるとハードルが高くて、なかなか見ることができないでいた。
映画が「ハードルが高い。」などと書くと、レベルの低さにあきれられそうだが、メンタルをやられてしまうと、2時間もの作品を集中して見ていられないし、ずっしりと重いテーマを扱ったものなど、見ていて息苦しくなってしまうのだ。
ハラハラドキドキするサスペンスものやギリギリのところでピンチから脱出するようなアクションものを面白いと感じるのは健康な人なのだと思う。平穏な日常を離れて、しばし、非日常の刺激を楽しみたいという幸せな人なのだ。
今の私はむしろ刺激が怖い。アンハッピーな結末が怖い。見終わった後、落ちこんでしまいそうだし、引きずってしまいそうなので怖いのだ。

そんな私が久しぶりに映画を見た。と言っても、劇場ではなく、Netflixで配信されたものをスマホの画面で見ただけだけれど。

見た作品は『風が強く吹いている』三浦しをん原作の、弱小駅伝チームが箱根駅伝の出場をめざすというもの。
小出恵介と林遣都の走る姿が美しい。(小出恵介、女子高校生に淫行をしたとかで、現在、謹慎処分となっているようだがどうしているかな。彼の出演した映画が配信停止になったり、彼の出演シーンがカットされている作品もあるようだが、なぜか、この作品は無事、配信されていた。)

人が「走る」姿は美しい。私は、人が走っている映像を見るのが好きだ。
これに美しい音楽が加わった、それだけで涙があふれてきてしまう。

思い起こせは『マイウェイ』。これは1975年の映画で、学生だった頃、劇場で見たのを思い出す。テーマは家族であり、父と息子の確執であり、それをマラソンに挑むことを通して描いている。音楽は言わずと知れた名曲マイウェイ。
まだ若かったし、映画館でボロボロと涙を流した記憶がある。
ただし、この映画には突っ込みどころがある。舞台が南アフリカなのだ。
それなのにアフリカ系黒人は一人も登場しない。
美しい空、美しい海、美しい街並み。
南アフリカの白人社会が、快適な住環境のもとに成り立っているのがわかる。
当時、南アフリカはアパルトヘイトも撤廃されておらず、ネルソン=マンデラも収監中の身だった。アフリカ系住民は差別され劣悪な住環境のもとで暮らしていた。
それを考えると、そこに目を向けずに、豊かな白人社会をノーテンキに描いていいのかと言いたくもなるが、テーマはそこではないという事になるのだろう。
舞台が南アフリカであることをとりあえず無視すれば、「走る」という事の素晴らしさを描いたこの作品は、私の若かりし日に見た作品の中でも好みの一つだ。

炎のランナー』も音楽が感動的。宗教がからんでいるけれど、人が走っている映像と美しい音楽があれば、それだけで感動的な映画になってしまうような。(もちろん、そんな簡単なものではないけれど。)

ミニシアターで上映していた『人生はマラソンだ』というのもあったな。
倒産寸前の自動車修理工場の経営者が、4人のメンバー全員がマラソンを完走すれば4万ユーロの出資をしてやるというスポンサーを獲得してくる。会社再建のため、メンバーは頑張るのだが、オッサンばかりのメンバーは運動不足にメタボ。そして何より、修理工場の経営者は末期がんで余命宣告までされている。それをまわりに隠して、無謀ともいえるマラソン完走に挑戦するのだ。
結末を何となく想像できてしまいそうなストーリーなのだが、メンバーそれぞれが事情を掲げ得ながらマラソンに挑戦していくところがいい。

「走る」映画には、はずれはないような気がする。ゴール直前で主人公がぶっ倒れてよろよろになりながらゴールする(あるいはできない)というお決まりのパターンが臭くて嫌いだという方にはお薦めできないけれど、なんといっても、人が力を振り絞って走る姿は、見ている者の心を打つ。



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萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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