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NHKスペシャル 未解決事件 JFK暗殺

2020年4月29日、5月2日。NHKスペシャルでJFK暗殺の謎を扱った。
コロナウイルスの感染拡大防止のため、各国で渡航制限が出される直前の2月に撮影を終了させたという、まさにギリギリのタイミングで出来上がった番組だ。

1963年11月22日のJFK暗殺からすでに57年がたっているが、今なおこの事件の真相は明らかになっていない。
ケネディ・ファイルと呼ばれるこの事件に関する機密文書が2017年に一部公開されたが、残りの資料も公開すると確約したトランプ大統領は、その後、資料公開の約束を撤回した。
そのような状況の中でも、今なお専門家たちがこの暗殺事件の謎に迫っている。

JFK暗殺事件を題材にした映画は、『ダラスの熱い日』(1973)、『JFK』(1991 オリバー・ストーン監督)、『パークランド』(2014 トム・ハンクス製作指揮)などがある。

オリバー・ストーン監督作品では、ケネディ暗殺の背後に、ベトナム戦争への積極介入を望む巨大組織の陰謀があったのではないかと匂わせる描き方をしていた。
この作品ではまず冒頭に軍産複合体の肥大化に対する警鐘を鳴らした有名なアイゼンハウアー大統領の退任演説が流れ、さらにそれに続いてケネディ大統領の演説が流れる。
「世界に向かってアメリカの武器を売って、平和は来ません。」

ベトナムからの撤退を進めようとしていたケネディ大統領は暗殺され、副大統領から昇格したジョンソンは、北爆を開始し、ベトナム戦争に本格介入した。
兵器を売りたい軍事産業がベトナム戦争への本格介入を望み、その逆の政策を進めようとしていたケネディを排除したかったであろうという推測は成り立つ。
関与の程度がどの程度かはわからないけれども、暗殺の背後に、ケネディの排除を望む巨大組織の存在があったのだろうし、その解明を阻む国家権力を批判する作品の作り方だった。

オリバー・ストーン作品から29年後。
今回のNHKスペシャルでは、元CIA高官のラーセンなど、66人いるという専門家の証言をもとに事件を追究した。

特に“CIAの一部が暴走して、オズワルドのカバー・ストーリーを造り上げた”という
元CIA高官ラーセンの証言は驚きのものだった。
カバー・ストーリーとは特定の人物に濡れ衣を着せるため、つじつまを合わせのための作り話のこと。
計画は、暗殺事件がオズワルドの単独犯であるというストーリーに仕上げるために、綿密に仕組まれていった。
オズワルドの経歴とは。
貧困と孤独な幼少年期を送り、15歳の時にマルクス主義に傾倒。海兵隊に入隊し、日本の厚木基地に駐留していた時期があり、この時に、KJBとの関係を持っていたと考えられる女との交流を持つ。そして、(その女の影響で?)ソ連へ亡命する。しかし、ソ連に絶望し、ロシア人妻アリーナを連れて帰国。その後、何をやってもうまくいかない。そのようななか、オズワルドはファシストの団体の頭首エドウィン・ウォーカー将軍の暗殺を実行する。この事件は犯人がわからない未解決事件とされたが、実はCIAはオズワルドの犯行であることをつかんでいた。しかし、逮捕につなげず、泳がせる。

恵まれない生い立ち。社会に対する不満。ソ連に亡命・帰国という経歴。さらには未遂に終わったとはいえ暗殺事件を実行したこと。カバー・ストーリーを仕立て上げるには、材料がそろいすぎていた。

そして、計画実行。
オズワルドを引くに引けない状況に追い込んで、ケネディ暗殺を請け負うように脅迫する。
「あなたのやったことは、すべてわかっています。ウォーカーを殺そうとしましたね。
あなたには2つの選択肢があります。自首するか、我々に協力して新しい人生を歩むのか。」
さらに「君はヒーローになれる。」「心配するな。仕事を終えたら逃がしてやる。」という誘い文句も添えて。

オズワルドはケネディに向けてライフル銃を発砲し、犯行を行った教科書倉庫ビルを出る。
しかし、通りの曲がり角に待機しているはずの逃亡のための車はない。
南米のしかる場所に高飛びさせてやる、という約束だったはずなのに...。
ここでオズワルドははめられたことに気付く。
独自の逃亡計画を用意していなかったオズワルドは迷走し、あっけなく逮捕された。

patsy(はめられた)」

では、暴走した一部のCIA職員の動機は何か?

それは、1961年のキューバでのピッグス湾作戦にあるという。
ケネディはピッグス湾での空爆を許可せず、作戦は失敗。多数の兵士が犠牲になった。
また、ケネディはCIAの解体を強行する策を模索しているとされ、CIAの大統領に対する不満は爆発寸前であったというのだ。
CIAは大統領直属の機関であるから想像しにくいのだが、
「この大統領を排除すれば共産主義から我々の国を守れる。」という考えが、当時、一部のCIA職員のなかにあったという。

ラーセンは一部の暴発者による陰謀であり、CIAという組織全体は関わっていない、としながらも、CIAがその事実を隠ぺいしたことは認め、そのことを後悔している。

そして、それが今回の証言につながっていた。

しかし、今回、NHKの取材に対してCIAは、「国家安全上の懸念があるため、一部の資料は公開できない。」としたという。

“国家安全上の懸念”とは何だろう。
軍の戦略・外交上の駆け引きに関するものはもちろん国家機密である。
それ以外にも、きっと、“組織にとって都合の悪い真実”も国家機密と呼ぶのだろう。

ラスト。番組はCIA本部の壁に掲げられた新約聖書の言葉で締めくくっている。
「あなたは真実を知り、真実はあなた方を自由にします。」

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オリバー・ストーン監督の『JFK』については、以前、このブログでも書いていますので、こちらも参考にしていただけると嬉しいです。
http://haginori55.jp/blog-entry-49.html

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素晴らしい解説に拍手です❗️
映画の中では『ジャッカル〜』が好きです。これからも分かりやすい言葉で世界史アレコレを聞かせてください。

Nスペ JFK暗殺

> 素晴らしい解説に拍手です❗️
> 映画の中では『ジャッカル〜』が好きです。これからも分かりやすい言葉で世界史アレコレを聞かせてください。

ありがとうございます。フレデリック・フォーサイスの『ジャッカルの日』や『オデッサファイル』は昔、読んだ記憶があるのですが、すっかり忘れています。映画は見ていないです。渋いところを教えていただけたので、是非、探しして観てみます。
プロフィール

萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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