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夫の南アフリカ旅行

8月上旬、夫が南アフリカに行ってきた。

一橋大学の米倉教授主催の「南アフリカ最新事情視察」というツアーへの参加だ。

夫は今年6月で、長年勤めた会社を定年退職した。
再就職先の勤務が開始になるまでの期間とこのツアーの日程がうまく合った。

彼にとっては就職して以来、初めての長期休暇(というか無職期間)。
人生の再出発にあたって、リセットのための旅だった。

そして、ネルソン=マンデラの足跡をたどるこの旅は、彼の心の在り方を大きく変えたようだった。

それほどマンデラは偉大だ。

いまさら説明するまでもないけれど、27年間の獄中生活経て、黒人指導者として、アパルトヘイト撤廃を勝ち取った人物。

アパルトヘイトの撤廃が1991年。
そこに至るまでの間、特に1980年代の南アフリカは、アパルトヘイトをやめないことに対して世界中から非難を浴びていて、経済制裁を受け、スポーツの世界からもしめだされていた。

1984年のロサンゼルス=オリンピックの時、南アフリカの天才少女ランナーのゾーラ=バットがイギリス国籍をとって出場し、しかも不幸なことに競技中にアメリカ選手と接触、転倒させるというアクシデントをおこし、会場中からブーイングを浴びたのを思い出す。

今となってはあえて取り上げていうほどのこともない過去の出来事となってしまったかもしれないが、当時の様子を象徴する出来事だったと思う。
(すみません、私は陸上オタクなのです。)

世界中から非難を浴びていたのに、南アフリカはアパルトヘイトをやめることができなかった。
アパルトヘイト諸法という法律があるから、白人優遇社会を保っていられる。
たとえば、白人専用の公園に立ち入った黒人を法律違反で逮捕できる。
抗議行動を起こす者に対して、裁判を行わずに拘置措置をとることができる。
この法律を撤廃してしまったら、黒人を取り締まることができなくなる。
それが怖くて、撤廃できなかったのだ。

マンデラは白人大統領デクラークと協力し合い、話し合いを重ね、撤廃にこぎつける。
黒人たちに一切の報復はさせない、ということを約束して。

黒人たちにしてみれば、白人に対する恨みのおおきさは、水に流せるようなものではなかったろう。
仕返しをしてやりたい気持ちは、ごく自然に心の中にあるはずだ。
しかし、仕返しをしても、前には進まない。
過去を振り返るな、前だけ見ろ!

すごい。
これに至るまでの心の経過はどんなものだったのかと想像するだけで、平伏してしまう。

マンデラの心の在り方、指導者としての考え方、取り組みを思った時、日常の些細なことにすらすぐに腹を立てる自分の心の狭さを反省させられる。

人は、他者からひどい仕打ちを受けた時、まずは相手を怨む。
仕返しを実行しないまでも、相手に謝罪を求めるか、自分が傷ついたのだという事実を相手に知らしめたいと思う。
あるいは、へこたれずに事を成し得ることで、どうだ!すごいだろ!とばかりに相手を見返してやろうとする。

しかし、マンデラの場合、そんなことは突き抜けている。
そこには、27年間という、長い長い、考える時間があったのだろう。

目的は、恨みつらみをはらすことではない。
見返してやることでもない。
どうしたら、南アフリカが抱えている問題を解決できるか、なのだ。

すぐに「被害者意識」にとらわれる現代人。(私自身のことです。)
不平・不満の偏狭な思考のドツボにはまってしまったら、マンデラを思い起こして見よう。
(と、思っています。)



この旅では荒天によるフェリー欠航のため、マンデラが約17年間収監されていたロベン島の監獄を見学することができなかった。
そのことは、本当に残念だった。(自然条件なのだから仕方ない。)

しかし、実際に南アフリカまで行って、マンデラの足跡にふれたこの旅は、夫にとって、人生の中での宝物となったようである。



旅行前に、ツアー参加者に送られてきたのが
「ネルソン・マンデラ  未来を変える言葉」   長田雅子訳  明石書店
という本。

ありがたい本をいただいたと思っている。
名言集なので、アトランダムにページをめくって楽しんでいる。

自分の心が不安定な時、言葉が身にしみる。
何をしたらよいのか途方に暮れるとき、勇気づけられる。

さらに、旅行前、ツアー参加者に米倉先生が出した課題が、映画「インビクタス」を見ておくこと。

南アフリカに行くなら、そのくらいの準備はしておかなくてはね。
次回のブログでは、「インビクタス」について書きます。
                               つづく



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萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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