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無私の人。 吉田松陰とシモン=ボリバルの共通点

「吉田松陰とシモン=ボリバル」について書いてみようと思う。
まったく、脈絡のないこの2人を突然挙げてみても、何の共通点があるのか?と思われてしまいそうだが。

勝手ながら、歴史の教師をしている自分の生活上にたまたま出てきただけ。
前者は自分が見ているテレビ番組の登場人物であり、後者は世界史の教材つくりのために調べ物をしているうちに興味がわいた。
この2人を結びつけるつもりなどは全くなかったのだが、「似ているなあ。」と思う部分があり、それについて書いてみたくなった。


吉田松陰は、幕末の長州藩で、久坂玄瑞、高杉晋作らを育てた。
現在放映中のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』の主人公の兄なので、知名度は抜群。
(信長、秀吉、家康ほどではないけれど。)
一方、シモン=ボリバルは、世界史の受験生ならば、「知らなければまずいぞ」というレベルの人名で、教科書に必ず載っているラテンアメリカ独立の指導者であるが、この地域にあまりなじみのない日本では、あまり知られていない名前だろう。


『花燃ゆ』は、初回の視聴率が芳しくなかったようだが、そんな数字に振り回されることなく、じわじわと若い人たちの間で、ファンが増えてきているという。

なにより、吉田寅次郎(のちの松陰)を演じている伊勢谷友介がいい。
実は、私は、初回からかなりしびれている。

人はなぜ学ぶのか? 
職を得るためでも、出世のためでもない。人に尊敬されるためでもない。
己のため、己を磨くために学ぶのだ!」
というセリフを言った時の吉田寅次郎を演じる伊勢谷友介の目の輝きが素敵だった。

吉田松陰とはどのような人物か。
人の心は善。真心をこめて人と向き合えば、思いは必ず伝わるはずだ。」
というあたり、性善説の立場をとる私は、共感する。
しかし、それが度を越しているというか、「この人、アホか。」と言いたくなるくらい、人に対して悪意を持たないし、思ったことを行動に移してしまう。

そして、黒船に乗船して密航しようとした。
日本の将来を案じたためとはいえ、本当に黒船に乗ろうとするあたり、「正気か?」と思ってしまう。
国禁を犯したしたことになるその行動により、萩の野山獄につながれる。
が、そんなことではへこたれない。ここでも、牢につながれている人たちとの間で勉強会を始めてしまう。
天性の楽天家なのか?
のち許されて蟄居の身となり、松下村塾を開き、幕末の志士を育てた。
しかし、安政の大獄で死罪・・。


長州藩きっての秀才で、若くして長州藩兵学師範になった。
早くからその優秀さは認められていたのだから、そんな無茶をしなくても、安定した生き方ができたであろうが、損得勘定、世渡り、保身・・などの言葉とは、無縁の人だったのだろう。


一方、シモン=ボリバル。
スペインの植民地であったベネズエラ、コロンビア、エクアドル、ボリビアを独立に導いた指導者である。
(その功績についてはどの教科書にも載っているが、彼の人生について触れているものはない。まあ、そんなことまで書いていたら、教科書が何ページあっても足りないわけだけれど。)
ベネズエラの富裕な地主層の家に生まれたが、自分の農園の奴隷を全て解放し、農園や鉱山を売却して解放戦争の資金にするなど、私財のすべてを投じて活動を続けたために、死の直前はほとんど何も残っておらず、シモンの死によって、ボリバル家は完全に没落したという。

Wikiで調べていたら、彼の名言が載っていた。
私は自由と栄光のために闘ってきた。しかし、個人的栄達のために闘ったことはなかった。」

このあたり、幼い時に叔父玉木文之進に、「己を捨てよ。公のために生きよ。」と厳しく教えられた松陰の価値観と共通するものがあるように思う。

ボリバルの言葉に、「歴史上、最大の馬鹿者三人は、イエス=キリストとドン=キホーテと私だ。」というのも載っていた。(ドン=キホーテは歴史上の人物ではないけれど。)

私財を失ってしまった自分の人生を自嘲して言った言葉だ。
しかも、彼がまとめあげた大コロンビア共和国は、地域間対立により3国に分裂してしまうなど、彼の思い通りにはまとまらず、失意のもとで死んだという。

松陰も同じようなところがある。まだまだ志半ばというところで安政の大獄が起こり、人生を刑死という結末で閉じる。

でも、この二人、自分の人生に後悔はしていなかったのではないか。(と思いたい。)
やりたいことはやった。
結果はどうであれ、そのことには満足して死んだ。(と思いたい。)

吉田松陰の辞世の句
身はたとひ 武蔵の野辺に 朽ちぬとも 留め置かまし 大和魂

彼の遺志は、幕末の志士たちに引き継がれた。



もう少々、自分の人生計画とか、老後の心配をしても良いのではないかとも思うけれど、こういう、無私の人たちが歴史のなかで何らかの役割を果たしてきたのだろうな、と思う。

実際、松陰の育てた幕末の志士たちは、必死で考え、行動し、明治維新を成し遂げた。
おかげで、帝国主義時代に突入していた世界情勢の中にあって、日本は植民地化されることなく、近代国家としての歩みを進められた。

最後に、もう一つ、余計なひと言。
松陰の実家の杉家の人々の明るさ、おめでたいと言いたいくらいの、「いい人」っぷりに感動。
こうした家庭環境のもとで、松陰のような人格が育成されたのだと思った。

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萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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