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アメイジング・グレイス

生徒のRちゃんから「アメイジング・グレイスって映画を見ましたか?奴隷貿易廃止に活躍したウィルバーフォースの話で、首相のピットも出てきますよ。」と教えてもらった。
Rちゃん、ありがとう。
その映画は、ちょっと前にNHKのBSのプレミアムシネマで放映されていたのだけれど、録画しただけで満足してしまい、実は、まだ見ていなかったのだ。

で、家に帰ってから早速見た。

アメイジング・グレイス
2006年のイギリス映画。
奴隷貿易廃止の法案を成立させようとするイギリスの若き政治家ウィルバーフォースとその親友ピット。

正しいと思って貫こうとしても、それを達成するまでには時間がかかる。

奴隷たちの悲惨さを訴えても、奴隷貿易による利益を受けている連中はそれを手放そうとしない。
議員の多くが西インド諸島で利権を持っている。
農園に投資するものも、船を所有するものもいるのだ。

「奴隷を持たなければ農園もない。農園なしでどうやって財源を確保するのだ。」
「イギリスが奴隷貿易をやめても、それをフランスの横取りされるだけだ。」
反論する議員たち。
個人としては奴隷貿易廃止を支持したくても、地元を代表する立場だからそれはできない、というリヴァプールの議員。

でも、リルバーフォースは負けなかった。


世界史教師の立場から、しつこいけれど、補足説明。

1713年のユトレヒト条約で、イギリスはアシエント(スペイン領アメリカに黒人奴隷を供給する特権)を獲得した。
以後、イギリスは、奴隷貿易、砂糖貿易で莫大な利益を得る。
アフリカ西海岸には武器(イギリス製の銃や刀剣)が輸出され、部族間で戦わせ、捕虜が奴隷としてアメリカ大陸に運ばれたのだ。その黒人奴隷がアメリカのさとうきびプランテーションで過酷な労働を強いられ、砂糖がヨーロッパに輸出される。
武器 ⇒ 黒人奴隷 ⇒ 砂糖  
悪名高い、18世紀の大西洋三角貿易である。

イギリスで奴隷貿易廃止となったのが1807年。奴隷制度が廃止となったのが1833年。
これは、世界史受験生にとっては必須事項。
ウィルバーフォースは山川の世界史用語集に頻度数1で掲載されていた。
つまり、11冊の世界史Bの教科書のうち1冊にだけ、記載があるということ。

日本人にとってはそれほどメジャーな政治家ではない。
が、信念の政治家だ。
ウィウバフォースが、奴隷貿易廃止のための最初の議案を提出し、あっさり否決されたのが1791年。
ようやく法案が可決されたのが1807年。
活動を始めた時期から数えると、成立までに20年かかっている。

その間に、親友のピットもフォックス卿も死んだ。
ことを成し遂げるのは大変なことなのだ。


もう一つのみどころ
ジョン・ニュートンが粗末な修道士の服装で裸足で、教会の掃除をしているところ。
彼は奴隷貿易に携わっていた。そして、無残に死んでいった22万人の奴隷たちの亡霊とともに暮らしている。
彼も苦しいのだ。過去の行いを悔いている。

その対局にいるのが、自分たちの利益のためだったら、奴隷たちが悲惨な扱いを受けていることなど、気にもかけない議員たち。
想像力の欠如だ。奴隷たちがどんな悲痛な思いで死んでいったかを、想像してみることすらしないのだ。

ウィルバーフォースは、タンスの引き出しの中に入ってみる。
奴隷船で運ばれた奴隷たちに与えられたのと同じ大きさの空間だから。
そこに入れられた奴隷たちの気分を味わってみようとしているのだ。

人間には2種類がある。平気な人たちと、苦しむ人たち。
いつの世も同じだ。







テーマ:映画感想 - ジャンル:映画

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萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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