『ミケランジェロ・プロジェクト』   低評価のようですが・・。

『ミケランジェロ=プロジェクト』
監督・脚本・製作  ジョージ=クルーニー

出演 ジョージ=クルーニー、マット=デイモン、ケイト=ブランシェット、ビル=マーレイ

2014年のアメリカ映画
日本での公開は2015年11月

近所のTOHOシネマで見てきた。
公開終了間際だったし、平日のアサイチということもあり、館内はすいていて快適だった。
(人気がなかったってこと?)

第二次世界大戦中、ヒトラーに奪われた絵画、彫刻などの貴重な美術品を、「モニュメンツ・メン」として結成された6人の美術専門家たちが奪還するという話。
第二次世界大戦、美術品、マット=デイモン!!!
私としては見に行かないわけがない、というほど興味のある作品だった。
ドイツによるパリ占領、連合軍側によるパリ解放、など、第二次世界大戦中の戦況を、頭の中で時系列に沿って整理しながら、そして、無造作にトラックに積み込まれる名画を見落とさないように、真剣に全神経を集中してみた。
結果はわかっているものの、フェルメールの「天文学者」やミケランジェロの聖母像を無事奪還できた時には、見ていて「ああよかった」と思った。

とても楽しく見ることができ、いい気分で家に帰ってきて、ネットでこの作品について調べてみた。
どうも、映画評論家たちからの評価はあまり高くない。
というか、低評価。

まずは、この点について考えてみたいと思う。

この作品は、ヒトラーという、第二次世界大戦を引き起こし、ユダヤ人の大量虐殺を行い、歴史的な美術品までも破壊しようとした、「悪」に対して、アメリカが戦ったのだという話。
モニュメント・メンとして編成されたのは、美術館の学芸員などの、兵士としてはまったくの素人集団で、彼らは訓練を受け、銃を持ち、命を懸けて、破壊される寸前だった多くの美術品を奪回した。
敗走するドイツ兵に銃で撃たれるなど、2人の犠牲者が出るが、彼らは、このプロジェクトに参加できたことを誇りに思いながら死んでいく。
戦況がドイツの敗北に向かっているから、隠された美術品も次々に発見されていく。
ラストの場面では、美術品が隠されていた岩塩の坑道の入り口に星条旗を掲げて、ソ連軍到着の前に去っていく。
(ソ連は戦争の保障のために美術品を売りさばいて資金に充てようとしていて、アメリカは美術品を持ち主に返還しようとしている、という設定。)
少々、とんとん拍子に行きすぎであり、全体にアメリカ賛美の色調が強い。
低評価なのは、そのせいかなと思った。
しかも、公開の時期が悪かったと思う。
現在の国際情勢の悪化の原因を考えた時にアメリカの責任は大きいから、今時(いまどき)、こんなおめでたい映画をつくっていいのか、と、見ている方は何か釈然としないものを感じるのだろう。



この作品は、80%、実話に基づいて描いているという。
ヒトラーという人物の強欲さはここまですさまじいものだったのかと驚かされた。
「総統美術館」なるものをつくろうと計画し、占領地から美術品を強奪した。
その数500万点以上だという。
さらに戦況が不利になり、退却を余儀なくされる事態になったときに、美術品の破壊を命じた「ネロ指令」を発した。
自分のものにならないなら、破壊してしまうという発想。
ここまで自分勝手な発想があるだろうか?
美術品は自分一人のものではない、歴史的な美術品は、破壊してしまったら、もう二度度ともとには戻らない、ということを、考えもしないのだろうか?



この作品を見て考えさせられたもう一つのことは、美術品にはそれぞれの歴史があるのだということだ。

私は、フェルメールの「天文学者」が当初からルーブル美術館が所蔵しているものだと思っていたわけではないが、それについて、深く考えたことはなかった。
今回、気になって調べてみて、もともとは個人所有のものだったのだと、気づかされた。
「天文学者」は、19世紀末にフランスのロートシルト家(ユダヤ系の金融業者の一族)が画商より購入し、所有していた。1940年のナチス=ドイツのパリ占領の時にドイツ軍に強奪されたが、この映画で描かれているように、「モニュメント・メン」たちの活躍により奪還され、ロートシルト家に返還された。遺産相続のおり、相続税の現物税としてフランス政府に納められ、以後、ルーブル美術館に展示されているという。

ついでながら、この映画では全く登場しないが、「モナ=リザ」はどうだったのかと調べてみたら、16世紀にフランス王フランソワ1世が購入し、フランス王室の所有となり、途中、盗難中の期間もあったようだが、とにかく現在はフランスの国有財産。
さらについでながら、では、ルーブル美術館の作品は第二次世界大戦中、どうであったのかが気になって、調べてみた。どうも、ドイツ軍のパリ占領直前に大事な作品はどこかに隠され、終戦とともにルーブルに戻ってきたらしい。すべて、ひそやかに。
ということは、ヒトラーはルーブルの作品には手が及ばず、主に、ユダヤ人の富豪から美術品を強奪したということか。

文化的に価値のあるものを守ろうという人たちがいたから、今に引き継がれているのだと思う。
その点もふまえて、絵画を見たら、その作品の背後にある歴史にまで思いをはせることができ、味わい深いものになると思う



最後に。
以前、「平和のための戦争はあるか?」という問いを突きつけられて絶句した経験があるが、第二次世界大戦を経験している人類にとって、答えは、「ある。」というしかないと思う。
第二次世界大戦は、ヒトラーという「悪」に対する戦いだった。
「平和」を取り戻すために戦わなければならなかった。
結局、ヒトラーという人物が独裁権を握ってしまった時点で、戦争への道は必定であったように思う。

それでは、21世紀の現在を考えてみたらどうか。
言うまでもなく、戦争は避けなければならない。
いったん始まってしまった戦争を終結させることが、どんなに大変なことかもわかっている。
戦争というものがどんなに人々を不幸に陥れるかも、人類は、歴史から学んでわかっていることである。

何としても、戦争になることは避けたい。
が、ほんとにこの先、大丈夫なのか、と多くの人が不安に思っている。



「ミケランジェロ・プロジェクト」
私はこの映画が好きだし、感想として面白かったと言えるけれど、今の世界情勢を考えた時、作り方が能天気(ノーテンキ)すぎたのかもしれないと思った。
ISがイラクの都市モスルを制圧した2014年6月以降、世界がおかしくなってきている。
こんな状況下でなければ、2014年に制作されたこの映画の評価も違っていたのではないかと残念でならない。

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萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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