『ブラッド・ダイヤモンド』

『悪の力』 姜尚中 著  を読んでいたら、次のような文章がありました。
「(人間というものは)場合によっては自分では気づかないうちに、悪を及ぼしているかもしれません。 たとえば、大枚をはたいて、愛する女性にやっとダイヤモンドの指輪をプレゼントすることができ、恋人も幸せな気分に浸っているとしましょう。(略)しかし、指輪は経済的・社会的連鎖を通じて、思いもよらない、遠いアフリカの「紛争ダイヤモンド」、いわゆる「ブラッド・ダイヤモンド」と繋がっているかもいるかもしれないのです。」

今週はなにやら、「ブラッド・ダイヤモンド」に縁がありました。

ネットであちこち検索していたら、「個人的にオススメしたい社会派な洋画10選!」というブログ※の記事にいきあたり、そこで、「ブラッド・ダイヤモンド」がオススメ度★★★★★で紹介されていたので気になっていたところだったのです。
※〔apollon  高知で働くフリーランサーのブログ    d-illust.com 〕


実は私は、以前『ブラッド・ダイヤモンド』を見ようとしたことがあるのですが、冒頭の、兵士たちが村を襲撃するシーンが、あまりにも残虐で見ていられなくなり、挫折しています。
(wowowで録画していたものを、どんな映画なのかの知識もないまま、家のソファにふんぞり返りながら見始めるという、安易な取り組み方がいけなかったのだと思います。)
今回、これが社会派な映画であるとようやく知り、見てみようと思いました。
見終わった今の感想は、「見てよかった。」です。
今まであまり好きでなかったディカプリオが好きになりました。

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『ブラッド・ダイヤモンド』
2006年のアメリカ映画
(9年前の映画。気になってはいたものの見逃している、という方は是非。自信を持ってオススメできます。)

監督:エドワード=ズウィック
出演:レオナルド=ディカプリオ、ジャイモン=フンス―、ジェニファー=コネリー


舞台となったシオラレオネについて。
シオラレオネは、1991年~2002年まで、ダイヤモンドの鉱山の支配権をめぐって、政府軍と、反政府勢力の革命軍(URF)による内戦が続いていた。URFという組織は、当初は、「白人の言いなりになっている政府の打倒」を掲げていたが、次第に政治性は影をひそめ、略奪・暴行を繰り返す集団になっていった。
URFに襲われた村の住民たちの多くは殺害され、体力のある男はダイヤモンド採掘場に連れて行かれ、強制労働をさせられた。恐怖心をうえつけさせるためなのか、そのうちの何人かは手や足を切断された。襲われた村の子供たちは、URFの兵力として、少年兵に仕立て上げられた。なんの罪もない無垢な子供たちが麻薬漬けにされ、銃を持たされ、人を殺すことを強いられた。かがやく未来のあるはずだった子供たちは、人格まで破壊された。最終的に内戦による死者の数は7万5000人以上であったという。


こうした状況下でストーリーは展開する。
内戦下での人々の悲惨な生活、少年兵のこと、紛争地域のダイヤが武器の購入資金など内戦の財源になっているということ、こうした問題点をきちんと描いているという点で、この映画は社会派な作品といえる。
その上、おもしろいのだ。(悲惨なシオラレオネのことを思うと、「おもしろい」というのは不謹慎な表現になると思うのですが。)
凶暴なURFの襲撃をくぐり抜けながら、隠したダイヤを取りに行くという展開が、スリリングで見ていて飽きることなく、作品の中に引き込まれていった。

主人公のダイヤの密売人アーチャーがローデシア(現ジンバブエ)出身という設定もいいと思う。
ローデシアは、1965年、少数の白人が多数の黒人を支配する国家として独立した。しかし、黒人の抵抗と国際的圧力により、1980年、ジンバブエとなり、白人支配は終わる。そこでアーチャーは国を出て南アフリカにわたり国防軍に入る。アーチャーも自分が生まれた国家の変容に運命を翻弄された一人なのだ。
その後、シエラレオネでダイヤの密売人となったアーチャーは、なんとかアフリカから抜け出したいと思っている。そのための資金が欲しいアーチャーはソロモンの隠したダイヤを狙う。一方、URFの襲撃で家族と離ればなれになってしまったソロモンは、家族を探し当て、少年兵になってしまった息子を奪還したいと思っている。ジャーナリストのマディーは、ダイヤをめぐる取引の不正をあばき、シオラレオネの現状を世界に伝えたいと思っている。お互い、相反する立場にいながら、それぞれを利用しあう。当初は反目し合っていたが、URFの凶暴な攻撃から逃れているうちに、心がつながっていく。
極限の状況下で生死を共にしているうちに、人は共感しあえるのだろう。

途中、考えさせられるセリフがいくつも出てきた。
特に、ソロモンのセリフが心にささった。
白人がダイヤを欲しがるわけはわかる。
だけど、何故、アフリカ人同士が殺し合う?
アフリカ人には何かが足りないという人がいる。
だから白人に支配された方がうまくいくのだ、と。」


つぶやくように言った言葉だが、聞いていて心が痛くなる。

シオラレオネという国は、18世紀の大西洋三角貿易で、白人によって滅茶苦茶にされた国である。
アメリカ大陸での労働力を補うために、シエラレオネなどの西アフリカ地域から黒人奴隷が輸出された。人間であるのに、『黒い積荷』とよばれて、つめられるだけ船に押し込まれて、船で運ばれた。運ばれるのは、サトウキビや綿花のプランテーションで十分働けるような、若くて健康な黒人たちだった。奴隷狩りはアフリカ人のあいだに部族対立を生み出した。負けた部族が奴隷として売られていくのだから。アフリカの部族は、勝つためにヨーロッパから銃を買った。

奴隷貿易によってアフリカが受けた被害は大きい。働き手の若者たちを奴隷として奪われたため、アフリカの発展は阻害された。白人にうまく取り入って強くなった部族と、銃も買えない貧しい部族の間の憎しみ合いが生まれた。

さかのぼっていくと、そこに行きつく。
そして、1991年から約10年にわたった内戦。
さらに、この国は、2014年には、エボラ出血熱に見まわれた。(シエラレオネではようやく2015年11月に終息宣言がだされたが。)

なんで、この国にこんなつらい歴史が展開されるのかと思ってしまう。



2003年1月、 “紛争ダイヤ”の売買を阻止する制度、キンバリー=プロセスを導入
いまだに売買は続いているが、それを阻止するのは消費者である。
シオラレオネは平和になった。
しかし、アフリカにはまだ20万の少年兵がいる。」

エンディングで流れた字幕である。
考えさせられる。

紛争ダイヤの売買を阻止するのは消費者。
この映画で描かれているように、シオラレオネからリベリアに密輸され、そこから輸出され、ベルギーにわたり、インドで研磨され、という過程を経ているうちに、もうそれがどこから来たダイヤなのかはわからなくなる。
だから、キンバリー=プロセスという証明書がついているダイヤを買いましょうということです。

密猟による象の絶滅を防ぐために、象牙製品を買わない、という運動も広まっている。
私自身はおそらく、今後ダイヤやを購入する機会はないだろうし、象牙製品については絶対に買わない。
でも、食料品や日用品など普通に店頭に並んでいる商品についても、消費者として、どういう経緯を経てその製品が店頭に並んでいるのかということも関心を持ちたいと思った。
フェアトレードのマークについても、あまり意識することはなかったけれど、これから注意して商品を見てみようと思った。
微力ではあっても、消費者の意識が高まれば、企業の取り組み方もかわる。

追記:
ソロモンを演じたジャイモン=フンス―は、『アミスタッド』で反乱を起こす黒人奴隷のリーダー、シンケを演じた。マディー役のジェニファー=コネリーは『ビューティフル=マインド』でナッシュの妻アリシアさんを演じた。この映画、俳優もよかったと思います。

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萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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