『ワルキューレ』

4月10日(日)午前8:00 フジテレビの新報道2001を見ていたら、「金正恩 暗殺4つのシナリオ」という話題が取り上げられていた。アメリカとしては、もしも、金正恩が暗殺された場合の対応というのも想定しておかなければならないわけで、それについての研究があるという。
暗殺のパターンとしては以下の4つがあるということだ。
1.ヴァルキューレ型
2.ブルータス型
3.オズワルド型
4.金載圭型

1はヒトラーの暗殺計画で、かなりの数の軍人が参加した。結果は失敗。
2は古代ローマの時代のユリウス=カエサルの暗殺。実行したのは彼の腹心の一人であったブルータスを含む一派。親しいと思われていた数人により実行されたパターン。
3はケネディ大統領の暗殺。ケネディの全く知らない人間により、数百メートル離れた距離からの銃撃によるもの。この暗殺事件の調査委員会はオズワルドによる単独の犯行としているが、本当にそうなのか、背後に大きな謀略があったのかなかったのかは、未だに謎。
そして、4のパターンは、金載圭による朴正熙の暗殺で、側近中の側近が、数人での会食という場で、単独で大統領の暗殺を決行した。まさに1対1の犯行であった。

金正恩の暗殺が起こるとしたら、可能性は4のパターンであるという。確かにそれ以外は不可能だと思う。自分に反対するものは叔父であれ処刑してしまうのだから、周りは従順な態度を示す者だけで固められている。拍手の仕方が熱烈でなかったというだけでとがめられる体制なのだから、裏切りどころか批判的な態度をとっただけで排除されてしまうだろう。これではみんな怖くて、自分の保身のことしか考えなくなる。複数の人間が計画に加担するとは思えないし、途中で怖くなって裏切る人間が出てくるのは必至だ。だから1も2も3もありえない。起こるとしたら4のパターンだけ。しかし、これも今の様子を見ているとこれもなさそうだ。危険な人物が権力を握ってしまった場合、排除するのがいかに難しいかがわかる。

それにしてもワルキューレ作戦はスケールの大きい計画だった。歴史に「もし」を言っても仕方がないが、1944年7月20日のこの計画が成功していれば、第二次世界大戦の休戦は9か月は早まっただろう。
そんなわけで、今回のブログのテーマは、
『ワルキューレ』
2008年のアメリカ映画。監督:ブライアン=シンガー。主演:トム=クルーズ

ヒトラーの暗殺計画は単独犯と組織的なものを合わせて少なくとも42回企てられたのだが、すべて失敗に終わっている。この作品はその最後で最大の「7月20日事件」を描いたもの。
この作品の前半で印象的だったのは、ヒトラー暗殺計画の会合に参加したシュタウフェンベルク大佐(トム=クルーズ)が、会合の中心にいたゲルデラ―たち政治家が、「ヒトラーと対決して失脚させるのだ。」といったことに対して、「そのあとは?」と質問したところ。
彼らには、ヒトラーを排除した後の明確な構想がなかった。ヒトラーの言いなりにはならない、ヒトラーに抵抗したドイツ人たちがいたのだということを示したい、と彼らは言う。しかし、それだけでは不十分だ。ヒトラーの首ががヒムラーやゲッペルスに挿げ替えられるだけで何も変わらない。成功させなければ意味がないという大佐の考えはもっともだと思う。
そして、シュタウフェンベルク大佐によって示されたのがワルキューレ作戦。
ベルリンには兵力数万の予備軍が置かれていて、ヒトラーが職務不能に陥った場合にその兵力を動員する”ワルキューレ“という作戦がもともとあった。大佐は、これを利用する「ワルキューレ作戦」を発案する。ヒトラーを暗殺し、SSによるクーデタ計画が起こったとして、この”ワルキューレ“を発動してベルリンを制圧し、新政府をつくって、連合国側との休戦に持ち込む、という計画だ。戦争を終わらせるというところまでを思い描いているというところが、単なる「要人の暗殺」に留まらないスケールの大きさを感じさせる。
同士たちの結束力も強く、例えば途中で誰かが計画を密告するとかいう裏切り行為もみられない。
だが・・・。
(裏切りとは言えなくても、ビビッて判断を遅らせる人物がいたり、作戦の進行とともに関わってくる人たちが、どちらの側につくのが得策なのかを判断するのは当然のことなのだ。)

これは歴史に基づく実話で、結果がどうであったかは自明のことなのだが、それでも、見ていてドキドキする。映画として面白いこと間違いなし。

そして思うこと。暗殺という手段はテロ行為である。使って欲しくないやり方である。しかし、ワルキューレ作戦が実行された第二次世界大戦末期のドイツは、それ以外に世の中を変える方法がないと考えられるような世の中だったのだ。そして、この作戦は失敗した。

独裁者が実権を握ってしまうと、それを排除するシステムも失われてしまうから、いかに恐ろしいことになってしまうかということも歴史から学んでおきたいと思った。

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萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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