『ラスト・コーション』

日中戦争中、日本の占領下にあった香港と上海を舞台とした、女工作員と暗殺対象の政府高官をめぐるストーリー。
イー(易)は抗日組織の弾圧を任務とする汪兆銘(号は汪精衛、中国ではこちらの呼び方の方がとおりがいいらしい。)政権下の特務工作員。汪兆銘政権は日本の傀儡であるから、そのもとにいるイーは漢奸、売国奴にあたる人物。抗日組織から暗殺対象としてねらわれている。だから、非常に用心深い。そんなイーのもとに女工作員チアチーがマイ夫人としてイーに近づき誘惑し、暗殺のチャンスをつくる任務を受ける。
いちおう世界史ブログなので、時代背景を説明してしまったが、そんなことを言うのが野暮だと言われてしまうくらい、この作品はチアチーを演じたタン・ウェイ(湯唯)の美しさと、イーを演じたトニー・レオンの魅力に圧倒されてしまう作品だ。
工作員とかスパイという任務は過酷だ。自分を偽り、相手を欺く。組織のため、国家のためとはいえ、人をだまし陥れなければならない。
任務を遂行するため、チアチーは女としての魅力を最大限に発してイーに近づき、肉体関係を結んでいく。警戒心の強いイーもチアチーにのめりこんでいくのだが、同時に若いチアチーがイーに心を寄せてしまったとしても不思議はない。

チアチーを演じたタン・ウェイは、オーディションでこの役を勝ち取った新人なのだが、この難しい役柄を見事に演じきった。そして、ほんとうにきれいで素敵だった。
なので、タン・ウェイのことをwikiで調べてみたら、その後、この人は中国では冷遇されたらしい。大胆なベッドシーンが災いしたとか、漢奸に心を寄せてしまった役どころがネット上で批判されたとか。さらに、2011年の中国映画で毛沢東の初恋の相手として出演したが、タン・ウェイの出演シーンはすべてカットされたとか。
いまだに中国はそういう国なんだな。なんかもったいない。

タン・ウェイは2008年に香港の市民権を得て、今は香港映画に出演しているようだが。
この作品におけるトニー・レオンは渋くていい味を出していると思う。

タイトルの『ラスト、コーション』のラストは、lastではなくて、lust=肉欲。
つまり、『ラスト、コーション』とは、中国語の原題どおり、『色、戒』。


『ラスト・コーション』
  製作国:アメリカ・中国・台湾・香港
  2007年公開。
  監督:アン・リー (『ブロークバック・マウンテン』、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の監督)

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萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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