13th 憲法修正第13条

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合衆国憲法修正13条
 奴隷制もしくは自発的でない隷属は、アメリカ合衆国内およびそのほうが及ぶいかなる場所でも、存在してはならない。ただし犯罪者であって関連する者が正当と認めた場合の罰とするときを除く。


合衆国憲法修正第13条は奴隷的拘束の禁止を規定している。
すべてのアメリカ人に自由を保障している。
だが例外がある。
犯罪者は適用外だ。
抜け穴となる言葉がる。
「犯罪者への処罰を除く。」
憲法の文言に抜け穴が埋め込まれていれば、目的は何であれ、都合よくつかわれるだろう。



南北戦争後、400万人いた奴隷が解放された。
南部の経済は破綻した。
経済再建はどうする?

修正第13条の抜け穴が利用され、大量の黒人が微罪で逮捕され受刑者となり、南部を立て直す労働力として使われた。

黒人は犯罪者だというイメージが急速に広まった。
しかし、ひどい逮捕に対する批判が高まると、合法的な手段に出た。
ジム・クロウ法と総称される、南部の各州の黒人差別の法律だ。
ホテルもレストランもトイレもバスも、白人か有色人種かで利用を区別された。
(法律があれば、たとえ白人専用のトイレを使用したとしても法律違反だ。)

そうした差別を撤廃させる運動が盛り上がり、1964年、ついに公民権法が成立した
しかし、困ったことに、公民権法成立と時期を同じくして犯罪率が上がり始めた。
急激な人口の増加で、当然、犯罪数も増えるものだが、
公民権運動のせいで犯罪率が増えたという考えも出てきた
「もし、黒人に自由を与えたら、その代償として犯罪行為が増えるだけ。」

アメリカの受刑者数は20世紀に入ってからほぼ横ばいであったが、
1970年代になるといわゆる「大量投獄」の時代が始まり、受刑者数が爆発的に増えていった。

1980年代初期、クラック・コカインという安価な麻薬が黒人たちの間に広まった。
麻薬は当然取り締まらなければいけないものであるが、黒人の間に広まっていることで、クラックに関する刑罰を不当に重いものにした。
クラック所持で終身刑。
大量の黒人が刑務所に送られた。
受刑者の数を爆発的に増やした。

麻薬との闘いは警察の横暴を許した
腹ばいの黒人に警官の銃が向けられた。


アメリカの受刑者数
1985年  75万9100人
1990年  117万9200人
2000年  201万5300人
2014年  230万6200人

アメリカの全人口のうち黒人男性は 6.5%
     全受刑者のうち黒人男性が40.2%

一生のうち投獄される可能性は
        白人男性は17人に1人。
        黒人男性は 3人に1人が生涯のうち一度は投獄される。


受刑者の数が膨大になったことに伴って、
1983年に初の刑務所運営会社CCAが設立された。
刑務所産業が成長産業になってしまった。
受刑者の安定供給によって生み出された莫大な利益は株主の懐に入る。
人を罰することで巨万の富を得ている全米一の民間矯正施設だ。

1973年に設立されたALEC(米国立法取引協議会)という保守系の政治活動団体は、
企業が最も有益となる法案を起草する団体である。
ALECを通してCCAは犯罪政策に影響を及ぼした。
刑務所の民営化だけでなく受刑者を増やした。

大量投獄が問題とならないのは、それが刑務所ビジネスに利益を生むから。
外国の低賃金労働は非難の的だが、アメリカ国内で同じことが行われている。
無賃金労働をさせて儲かる会社が存在する。
巨額の金が動き、大勢の議員が支持している。
簡単には手が付けられない。

時代とともに、形態は変化しても実態は同じ。
犯罪者は国の奴隷。
奴隷制が終わると受刑者の貸出制度が作られた。
これが非難されると、法律による人種隔離制度が生み出された。
公民権法成立で、これが廃止されると、大量投獄の時代がやってきた。


アメリカで司法機関が黒人の見方だったことは一瞬たりともなかった。
警官による不当な扱いについて、黒人の不満を無視することは完全な間違いだ。
人種問題や歴史的背景に無知なままでいては、黒人と警察の関係について議論できない。

数世紀にわたる歴史的経過があるのだから、それを踏まえずには解決しない。

BLMは特定のリーダーも拠点も存在しない活動だ。
社会現象だから拳銃で止めることはできない。
そこに希望がある。


*************

以上、映画の字幕を静止画面にして書き写し、まとめてみました。
時間がかかりましたが、とても勉強になりました。

作品の前半で、「国民の創生」という南北戦争とその後の世界を描いた映画が登場しました。
この映画では、黒人はレイプ魔だというイメージを作り上げ、これと闘うKKKを神秘的・英雄的に描きました
この映画により、KKKは復活し、人気を博すようになりました。
悪名高い反黒人組織のKKKが一時会員500万人というのが信じられなかったけれど、こういう映画の影響があったのだとわかりました。

ということは。
「国民の創生」という映画がそれだけの影響を当時の人々に与えたのなら、差別を批判する映画にも、人々の意識を変える力があるはず。

地味なドキュメンタリー映画でしたが、知らなかった多くのことを知ることができました。
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『デトロイト』

2020年5月末、ミネソタ州ミネアポリスで、黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官により、路上に組み伏せられ、警官の膝で首を押さえつけられて、「窒息」により死亡した。
抵抗をしていないフロイドさんと警官の暴行はすべて動画に収められ、これが拡散したことで、抗議するデモが各地で盛り上がった。
デモは「BLACK LIVES MATTER(黒人の命は大事)」を掲げ、黒人だけでなく、白人も加わって、BLM運動と呼ばれ、大きな動きになっている。

事件の直後、一部が暴徒化して、破壊活動を行った。
この時、トランプ大統領は、
「各州の知事や市長が必要な行動をしないなら軍の配備も辞さない」と警告した。
破壊活動や略奪などの行為に対して、フロイドさんの弟が、「こうした行為は兄の望むものではない」という呼びかけを行ったことで、過激な行動は収まり、平和的なデモに転換した。
そして、各地でデモが盛り上がりを見せると、トランプ大統領は、
「ANTIFAがデモを扇動している。」とtwitterでつぶやいた。
(ANTIFAとは、アンチ・ファシストの略称で、アメリカの政治や社会で勢力を広げ始めた極左の暴力的秘密組織なのだそうだ。)

トランプ大統領という人は、人々の抗議の動きに対しても、力でねじ伏せようとし、自分に都合の悪い動きの原因を、自分と敵対する勢力になすりつけようとするのだな。
問題の原因が人種差別にあると考えるなら、それを解消できるような方向に導くのが政治のリーダーの役割だと思うのだが、この人は歩み寄りではなく、対立を深める方向に事態を進めている。

あまりにも根深い問題なので、「アメリカ社会から差別はなくならない。」とまで言う人もいるけれど、
人々の意識を変えていくこと、人々の意識が変わっていくことで、解決への道を見いだしたい。
社会が目指す方向は見失ってはいけない。

暴力はや弾圧は人々の反発を生むだけだ。
人々の意識を変えるのは、悲しい出来事に対する抗議活動であり、
「差別はやめよう。」と呼びかける平和的なデモの盛り上がりであり、
SNS上の支持であり、また、文学であり映画であると思う。

発端となったミネアポリスの事件は、警官がフロイドさんを8分46秒という長い時間、「息ができない」ような状態で首を押さえつけた。
この行為は「殺人」と断定される。
警察が一般市民の黒人に行った暴行。
あまりにも理不尽。

過去に起こった同様の理不尽な出来事を描いた映画『デトロイト』をみてみた。
監督は『ハート・ロッカー』、『ゼロ・ダークサーティ』のキャスリン・ビグロー。


デトロイト

『デトロイト』

2017年のアメリカ映画
監督:キャスリン・ビグロー
出演
ジョン・ボイエガ 
  (黒人の警備員 ディスミュークス)
ウィル・ポールター
  (デトロイト警察のフィリップ・クラウス)
アルジー・スミス
  (黒人たちのバンドのボーカル、ラリー)

1967年のデトロイト暴動の最中に発生したアルジェ・モーテル事件を題材にした作品。

デトロイト市警のクラウスの暴行がひどい。
商業施設からの略奪行為をした黒人を追跡し、背後から銃撃して死亡させた。
逃走した黒人は、警官に対して抵抗はしていないので、もちろん正当防衛は成立しない。
このことをクラウスは上司から注意を受けるのだが、処分はなくそのまま勤務を続行。
そして、アルジェ・モーテル事件へ。
暴動により、コンサートも中止になって帰路に向かったラリーたちは、乗ったバスが暴徒化した市民に襲撃され運行できなくなり、最寄りのモーテルに避難した。
モーテルにいた別のグループの黒人カール・クーパーがいたずらに窓からスターターピストルを発砲した。

これを警察に向けた狙撃と勘違いしたデトロイト市警がモーテルに乗り込んで狙撃犯と銃を見つけ出そうとする。
その捜査のやり方があまりにもひどいのだ。
脅迫による犯人捜し。答えなければ痛い目にあうぞ、ということを見せつけての自白の強要。
結局、罪のない黒人3人が殺害された。
事件後の裁判では、かかわった警察官3人全員に無罪判決が下された。

*****************

この作品では、デトロイト市警のフィリップ・クラウスが差別的白人至上主義者として描かれている。
実際、そういう人だったのだろう。
背後からの銃撃、正当防衛を成立させるために現場にナイフを置くという卑怯さ、
黒人たちを壁に向かってたたせて、脅迫していく様子。
見ていて腹立たしくなる。
(この憎たらしい警官を演じたウィル・ポールターが見事!)

もちろん、デトロイト市警のすべての警官が差別的白人至上主義者というわけではない。
しかし、黒人と警察の対立は根深い。
差別感情をもったクラウスは、黒人の抵抗が怖かったのだろうと思う。
差別しているものからの反撃が怖いから、やりすぎてしまう。
警察権という権力を持っているだけに、弱い立場の黒人と権力を笠に着る警察という構図が出来上がってしまう。

************

公民権法の成立(1964)により、法律上、人種差別の撤廃がなされた。
しかし、現実のアメリカ社会では、差別はなくなっていない。

2020年の現在も。

『タクシー運転手 約束は海を越えて』

タクシー運転手

2017年の韓国映画
監督:チャン・フン
出演
ソン・ガンホ
 (タクシー運転手のキム・マンソプ) 
トーマス・クレッチマン  
 (ドイツ人ジャーナリストのユルゲン・ヒンツペーター)

1980年の5月に起こった光州事件を舞台に、戒厳令下の光州市を取材しようとする外国人記者を乗せるソウルのタクシー運転手を通して、この事件の悲惨さ、民主化を求める光州の人たちの気骨を描いている。

******

この映画のことを知らなかった。
2020年の6月1日にNHK・BSプレミアムで放映されたことで、Twitterに「よくぞこの時期に!」「NHK、やるなあ!」という声が寄せられたという。
「この時期」とは、もちろん光州事件の起きた1980年5月18日から40年という意味もあると思うが、やはり天安門事件の起こった6月4日を前にして、ということなのだろう。
今年も中国では天安門事件に関して報道規制がかけられている。
そして、アメリカでは、黒人男性ジョージ・フロイドさんが警官によって不当に殺害された事件をきっかけに全米で大規模なデモが起こっている。一部が暴徒化して、商業施設の破壊行為に及んだ時、トランプ大統領は軍隊の派遣を命じて、これを武力で鎮静化した。
このことに対する抗議の声がさらに高まっている。
まさにこのような時期に!

私は、BSの放送を見逃してしまったのだが、幸いAmazonプライムで見ることができた
(プライム会員なら今なら無料。)

「すごい」「見たほうがいい。」のTwitterのつぶやきの通りでした。

*******
光州事件とは。
1980年5月18日から27日にかけて、全斗喚(チョン・ドゥファン)軍事政権に対する
光州市で起こった民衆の抗議活動を、軍が武力を使って鎮圧し、学生や市民に多数の死傷者を出した出来事。

韓国では、1979年10月26日の朴正熙(パク・チョンヒ)暗殺後、「ソウルの春」と呼ばれる民主化を求める動きが広がっていた。しかし、粛軍クーデタにより実権を掌握した全斗煥が、1980年5月17日、非常戒厳令拡大措置を実施し、民主化の指導者の金大中らを逮捕した。すると、これに抗議する学生を中心とする市民によるデモが起こった。
(光州市のある全羅南道は金大中の出身地で、光州での人気は高かった。)
これを鎮圧する軍の暴行がひどいもので、光州市民の怒りはさらに多くの市民の参加に膨れ上がり、これを抑え込もうとする軍のやり方もさらに強硬なものとなり、死者150人以上を出す悲惨な結果となった。

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さて、「タクシー運転手」というこの作品について。
おもしろい!
家賃も滞納していたタクシー運転手キム・マンソプが生活資金を稼ぐため、大金が稼げそうだということで、取材のために光州まで行きたいというドイツ人記者を乗せる。
光州市に至る道路は軍が検問を設けて封鎖している。裏道を使ったり強行突破をしたりで、何とか光州市までたどり着くのだが。
そこで起こっていたことは...。
金稼ぎだけを目的に光州まで車を進めたタクシー運転手が、軍の暴挙を目の当たりにし、次第に学生や市民と共闘していく。
テレビから流れてくるニュースは、軍の被害の報道だけで、一般市民の被害については嘘だらけ。
この出来事の悲惨さを正しく世界に伝えるために、ドイツ人記者を守り抜く。
都合の悪い映像を流されたら困る軍は、執拗にドイツ人記者を追跡し、空港へ向かうのを妨害する。
この時、軍の妨害からマンソプの車を援護する光州のタクシー運転手たちの協力が感動ものだった。

*********
                   
見終わって強く感じたこと。
韓国は40年前の軍事政権下の暴挙をこうして批判を込めて映画にすることができる。
中国が、いまだに天安門事件のことを触れたがらないのと大違いだ。

民主化を求める学生の運動を軍の力をもって制圧、そして流血の惨事になった天安門事件は、世界中から非難を浴びた。しかし、この事件を、過去の過ちとしてきちんと総括できなければ、中国の民主化はやってこない。

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それにしても、韓国の大統領は暗殺されたり(朴正熙)、逮捕されて死刑判決を受けたり(全斗煥と盧泰愚)、自殺したり(ノムヒョン)、逮捕されたり(パク・クネ)と、やめた後が悲惨だなと思っていたが、全斗煥に関しては、この映画をみて、死刑判決は妥当だなと分かった。(その後、減刑、特赦)

******

主演のソン・ガンホは、『パラサイト 半地下の家族』ではラストで大事件を起こしてしまうお父さん。
この作品では、政治に興味なんてなかった一介のタクシー運転手が、軍に抵抗する光州の市民に共感し、危険をくぐりぬけながら、見事ドイツ人記者を金浦空港まで送り届ける様子を演じる。
JSAでは韓国軍兵士(イ・ビョンホン)が兄貴と慕うようになってしまう北朝鮮側の兵士を演じた俳優。
韓国を代表する、素晴らしい役者だと思います。
韓国映画、面白い。
まだまだ見ていない韓国映画の傑作がたくさんあるので、これから掘り起こしていきたいと思いました。

私の中でのトム・ハンクス作品ベスト

トム・ハンクスが出演した作品について、私の勝手なランキングを作ってみました。
順位をつけるのはどうかと思いつつ、今まで見てよかったと思うものを整理するという目的でのランキングです。
選んだ観点は、俳優トム・ハンクスの味がにじみ出ているということ。
以前このブログで書いたことがあるものはURLを付けましたので、そちらもお読みいただけたらうれしいです。



1.プライベート・ライアン (1998)
監督:スティーヴン・スピルバーグ
第二次世界大戦のノルマンジー上陸を舞台にした戦争映画の最高傑作。
戦闘シーンがすさまじい。
ライアン二等兵を救出せよという命令を受けたミラー大尉。任務に疑問を持ち始めた部下たちをまとめて戦場をくぐりぬける。
そしてライアンがいたのは、人手不足も甚だしい前線の橋だった。
そこでとったライアンとミラー大尉の選択は・・。
瀕死のミラー大尉が若いライアンに言った「無駄にするな。しっかり生きろ。」という言葉が心に残る。
http://haginori55.jp/blog-entry-5.html

2. フォレスト・ガンプ/一期一会 (1994)
監督:ロバート・ゼメキス
前年の『フィラデルフィア』に続き、トム・ハンクスがアカデミー主演男優賞を獲得した作品。
私はこの作品で初めてトム・ハンクスを見たのだが、知的障害のあるフォレスト・ガンプを演じる彼の表情、動作、走り方があまにもそれらしくて、本当に障害のある人を役につけたのかと思ってしまった。

3. フィラデルフィア (1993)
監督:ジョナサン・デミ
エイズを発症してしまったことで法律事務所を解雇されてしまった弁護士のアンディが、これを不当解雇であるとして法律事務所を相手取って訴訟を起こす。
ゲイであること、エイズ患者であることによる差別と闘うアンディ。
コメディ俳優だったトム・ハンクスが初めて取り組んだシリアス・ドラマ。
病気で体が弱っていくアンディを演じて、アカデミー主演男優賞を獲得。
http://haginori55.jp/blog-entry-50.html

4. キャプテン・フィリップス (2013)
監督:ポール・グリーングラス
ソマリア人海賊に乗っ取られた貨物船マークス・アラバマ号の船長。
貧しいがゆえに海賊行為をするソマリア人海賊に対しても、優しいまなざしを注ぐ。
http://haginori55.jp/blog-entry-22.html


5. ハドソン川の奇跡 (2016)
監督:クリント・イーストウッド
ハドソン川に不時着水したUSエアウェイズ1549便のサレンバーガー機長。
冷静な判断、完璧な操縦技術、乗客が一人残らず脱出できたことを確認して最後に飛行機から脱出する責任感。
乗客乗員に一人の犠牲者も出さなかった“奇跡”と呼ばれる飛行機事故でした。
http://haginori55.jp/blog-entry-108.html

6. ブリッジ・オブ・スパイ (2015)
監督:スティーヴン・スピルバーグ
舞台は1960年代の東西冷戦のさなか。U2機撃墜事件、ベルリンの壁構築が起こった時代。スパイ交換の交渉人としてベルリンに向かうドノヴァン弁護士。
スパイ飛行をしていたU2機のパイロットに対しても世間が「なんでおめおめ生き残ったのだ。」という冷たい視線を浴びせる中で、ドノヴァンは「気にするな。」と優しくささやく。(つまり、パイロットが撃墜により死亡していれば、スパイ飛行ではなく、誤ってソ連の領空内に入ってしまったとごまかせるので。)
ベルリンの壁構築の際、ぎりぎりのタイミングで西ベルリンに戻りそこなって東ベルリンに取り残されてしまったアメリカ人留学生に対しても、外交交渉の中で捨て駒にされそうなところを、ドノヴァンは何の罪もないこの学生の救出にこだわる。
ソ連のスパイ一人に対して、パイロットと学生の2人という1対2の交換の交渉。
相手は難癖をつけてくるが、強い胆力をもって、頑として譲らず交渉にあたるドノヴァンがいい。
http://haginori55.jp/blog-entry-47.html

7. グリーン・マイル (1999)
監督:フランク・ダランボン
死刑囚を収容している刑務所の看守。
http://haginori55.jp/blog-entry-109.html

8. アポロ13  (1995)
監督:ロン・ハワード
1970年、第3番目の有人月面飛行をめざしたアポロ13号は、酸素タンクの爆発などのトラブルが発生し、帰還困難状況になる。電力不足にも追い込まれ、電力の節約のため、ヒーターを切ったため船内は1~4℃の寒さになる。乗組員は凍えるような寒さを耐える。さらに二酸化炭素濃度の上昇。大気圏再突入への軌道のずれ。大変なことが次々に起きる。しかし、様々な困難を乗り越え、アポロ13号は無事、地球に帰還する。
どんなときにも冷静に、そして諦めずに最善を尽くしたラヴェル船長。必死に指令を送る地球の管制官や技術者たち。感動ものである。(実話だし。)

アポロ計画は1969年のアポロ11号が人類初の月面着陸を果たし、その後、17号までが打ち上げられ、13号以外の12号、14~17号はすべて月面着陸に成功して、失敗したのは13号だけ。しかし、困難な状況を乗り越えて、無事、地球への帰還を果たしたことから、「失敗の成功」といわれている。

9. キャスト・アウェイ (2000)
監督:ロバート・ゼメキス
トム・ハンクスが増量後22.7kg減量して臨んだ作品。(体に悪い。)
無人島でのサバイバル生活。
子供の頃に読んだロビンソン・クルーソーは、船に積んであった物資を利用して生活を作り上げていくところに夢があってわくわくしたが、こちらはかなり過酷。
本当に何にもない無人島で生きていくのは、なんと困難なことだろう。
そして、無事に帰還できた後のチャック。
自分が死んだものとされた4年間はもう元には戻らない。
イタリア映画の「ひまわり」を思い出した。

10. キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン (2002)
監督:スティーヴン・スピルバーグ
 「見終わった後さわやかな気分になれる」作品。
主演はディカプリオ。
トム・ハンクス演じるFBI捜査官が、何度も詐欺師アバグネイル(ディカプリオ)を追い詰めるのだがそのたびにまんまと騙されて逃げられる。
アバグネイルの言うことを信用してしまったり、気の毒な彼の家庭環境に同情してしまうあたり、FBI捜査官としては詰めが甘いともいえるのだが、そこがなんとも憎めない。
追われる犯罪者、追う警察という長年の関係のはてに行き着いた二人の関係が素敵。

この作品は、実在の人物である天才詐欺師フランク・アバグネイル・Jr.の原作をもとにつくられた。アバグネイルがパイロットや医者という高度な知識・技術を必要とする専門識の人に成りすます。(もちろん、飛行機を操縦するわけでも、医療行為をするわけでもあり
ません。) 人はパイロットの制服や医師の着る白衣に案外弱く、服装だけで信用してしまうのかもしれない。
が、それだけでは詐欺は不可能。それが可能だったのは、アバグネイルの知識の豊富さ、頭の良さがあってこそ。
そして、このアバグネイルの才能を犯罪者のままにはせず、生かそうとするFBI捜査官カール・ハンラティが素晴らしいと思う。アバグネイルに騙されてしまう彼は、間が抜けていると言いたくなるほどだが、最後まで徹底していい人。
ここでもトム・ハンクスの人間的な味がにじみ出ている。

11. ターミナル (2004)
監督:スティーヴン・スピルバーグ
  例えば、1991年のソ連崩壊の時、崩壊前のソ連のパスポートとビザで他国に入国しようとしたときに、ソ連という国がなくなってしまったとしたら、そのパスポートとビザで入国することはできなくなるのかな。クーデタで自国が不安定な状態だと、自国に戻ることもできなくなってしまうのかな。出入国管理法について全く知識はないけれど。
作品はかつてコメディ俳優であったトム・ハンクスの真骨頂。
空港の椅子を並べて寝るシーンで足が詰まって困ってしまうシーンなど、思わず笑ってしまうところがいっぱいあって楽しかった。
長い期間、空港で暮らすことで、そこで働いている人たちをみんな友達にしてしまうビクターのキャラがいい。

12.ビッグ  (1988)
コメディ俳優だったトム・ハンクスの最高傑作。
12歳の少年が突然大人になってしまう。親友のビリー以外はそのことを知らない。
うまいことおもちゃ会社に就職できて、子供の気持ちがわかる社員として、社長に気に入られたり、子供であることがばれないようにつじつま合わせに四苦八苦したり。
くすっと笑いながら楽しい気持ちで見ることができました。

12.ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書 (2017)
  監督:スティーヴン・スピルバーグ
アメリカの世論をベトナム戦争反対に転換させた最高機密文書の漏洩。
記事を掲載するかどうするかを葛藤するワシントンポストの社主をメリル・ストリープ。
この作品におけるトム・ハンクスは、ジャーナリストとして迷いがなくて、信念をもって突っ走る。
私はどちらかというと、苦悩するトム・ハンクスの演技が好きなので、彼に焦点を絞ると、順位としてはこんなところかな。
http://haginori55.jp/blog-entry-107.html

トム・ハンクス出演作品の監督をチェックしたら、以上12作品のうち5作品がスピルバーグで圧倒的に多く、このコンビは最強だなと思いました。さらに『ミリオンダラー・ベイビー』のクリント・イーストウッド、『ショーシャンクの空に』のフランク・ダランボン、『ビューティフル・マインド』のロン・ハワード、『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミ、『ボーン』シリーズのポール・グリーングラスなど。
名監督と名優のコンビです。
トム・ハンクスは『プリティ・リーグ』で体重を増量、『フィラデルフィア』で減量、『キャスト・アウェイ』で増量の後,減量と、役作りのために過激な体重コントロールをしています。何も、そこまでしなくても、と思ってしまうのですが、役に入り込んだ演技をするトム・ハンクスにとっては当然のことなのでしょう。

『グリーン・マイル』

オーストラリアで新型コロナに感染してしまったトム・ハンクスが無事回復して帰国し、コロナ治療薬開発のために「血漿」を提供したというニュースをきき、「アメリカの良心」ともいうべきこの人の作品についてブログに書きたくて,もう一度見てみた。

ストーリーの大筋は覚えているつもりだったのだが、細かい部分はだいぶ忘れていた。
初めて見たときには、コーフィのもつ不思議な力に注目がいった。
そして、実は彼は、双子の姉妹の強姦殺人犯ではなく、少女たちを助けたくて血まみれの彼女たちを抱いていたために犯人にされてしまい、えん罪だったのだ、ということ、そのコーフィがどうなるのかに興味が集中した。

時を置いて再び見てみると、違う見方をするものだ。
今回は、「刑務所の日常」に関心が行った。

グリーン・マイル

『グリーン・マイル』

1999年のアメリカ映画
原作:スティーブン・キング
    (『スタンド・バイ・ミー』、『ショーシャンクの空に』の原作者)
監督:フランク・ダランボン (『ショーシャンクの空に』の監督)
出演:トム・ハンクス

グリーン・マイルとは、獄舎から電気椅子へとつながる色あせた緑色の床の通路のこと。
全編3時間9分という長編作品。
エピローグとエンディングの老人施設を除いては、ほぼ全編、死刑囚が収容されている刑務所の中が舞台。

刑務所という特別な環境での職務。
看守という仕事も大変だ。
監房という閉ざされた空間。
相手は犯罪者で、しかもポール(トム・ハンクス)の担当しているのはE棟という、死刑囚を収監している獄舎。
彼ら看守は電気椅子による死刑執行も行わなければならない。
しんどい仕事だと思う。
(現在は薬物注射による死刑執行が主流であるが、この作品の舞台である1932年当時は電気椅子による死刑が行われていた。)

刑務所の看守主任ポールは同僚のブルータルらとともに、死刑囚に対して、残された日々を穏やかに過ごせるようにと、心を配りながら職務を果たしていた。
しかし若い看守のパーシーがそれをかき乱す。
このパーシーが、とんでもなくバカで幼稚で、救いようがない、ダメな人間の典型として描かれている。
思い通りにいかないと、知事の妻の甥であることを利用して、「クビにしてやる」というセリフをはく。
なんの実力もないのに、自分の親戚の権威を笠に着るサイテーな奴なのだ。
自分が悪くても、反省どころか、恥をかかされたことを恨みに思う。

もうひとり。
凶悪な死刑囚ウィリアム・ウォートン(通称ビル
自分が犯した罪について悔いることなどないのだろう。
いつまでも凶暴で、チャンスがあれば看守に対しても危害を加えようとする。

彼らがどうなるのか?
例えば、パーシーが経験を通して成長していくというストーリーも可能だったはずだし、ビルが自分の犯した犯罪をすべて告白して懺悔するという場面を作ることも可能だったはずだ。
が、そんな臭い展開にはならない。
どうしようもない奴はどうにもならないのだ。

瀕死の生き物を蘇らせたり、病を癒す不思議な力を持っているコーフィは、パーシーやビルの「悪さ」が耐えられなくなる。
彼の優しい心は、「いい人」を助けたいという気持ちにあふれているのだ。

しかし...。
「毎日のように、世界中の苦しみを感じたり聞いたりすることに疲れたよ。」
えん罪であることを知って、何とかコーフィを助けたい、しかしどうすることもできないで苦しむポールに対して、コーフィが言った言葉だ。

*****
「いい人」と「悪い人」がステレオタイプで登場しているし、コーフィが不思議な力を持っているということで、ファンタジーのカテゴリーに属する作品なのだが、刑務所の日常や1932年当時の死刑執行の様子はきっとこんな感じだったのだろうということがわかる作品です。

そしてやっぱりトム・ハンクス演じる刑務所の看守主任ポールは「いい人」です。
プロフィール

萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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