グッドナイト & グッドラック

2つ前のブログで新聞報道やジャーナリズムのあり方をテーマに書いたら、『グッドナイト&グッドラック』を勧められた。
さっそく見てみた。
グッドナイト&グッドラック

2005年のアメリカ映画。監督・脚本はジョージ・クルーニーで出演もしている。
1950年代マッカーシー上院議員によって行われた「赤狩り」旋風の中で、実在したニュースキャスターであるエドワード・R・マローとCBSの番組スタッフが、冷静にこれに立ち向かっていった様子を描いた作品。

見終わって、思ったこと。ジャーナリズムを扱ったまっとうな作品なのだが、まったく一般受けしなさそうなこんな作品をよく制作したものだな、ということ。
全編モノクロ。
娯楽性は全くなし。気になって調べてみたら、ジョージ・クルーニーはこの作品でアカデミー助演男優賞を受賞しているが、この作品の報酬は3ドルであったという。(監督1ドル、脚本1ドル、出演1ドル)。
儲けは関係なく、こういう作品が作りたかったのだろう。

クルーニーは、ハイチ地震被災者への寄付をしたり、スーダンのダルフール紛争解決のための抗議活動などの政治的な活動をしている。
日本ではスポーツ選手や俳優が政治的発言をすると、「黙っていろ」的な批判を浴びてしまうが、社会的に影響力のある人が、政治的な発言をすることや、慈善活動をすることを評価する文化を持ちたいと思う。被災地への寄付や炊き出しなどの支援をすると、売名行為だという見方をする人がいるけれど、有名人は社会的影響力が高いのだから、しっかりと意見を言って、遠慮せずに寄付や慈善活動も大いにしたらよいと思う。(年収高いのだし。日本でもひそやかに多額の寄付をしている有名人は多く、私はそういう方が素直に好きですが、それを取り上げる芸能誌に対しては放っておけよと思ってます。)

書き始めから、映画の内容から全くそれてしまった。
作品の話に戻るが、ニュースキャスターのマローの言っていることはいちいちまともです。

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マッカーシズムとは、東西冷戦が激しくなっていく中で、共産主義者を排除しようとする異常なほどの感情的で理不尽な動きだった。
リベラル派の官吏・外交官・軍人・文化人などを、すべてを共産主義者と決めつけて、彼らを職場から追放した。
社会がこういう状況になってしまったとき、人のとりがちな行動は黙ることである。
変だと思っても批判の声をあげない。
何か言ったことで、自分に矛先が向かってしまうことを恐れ、保身のために黙る。
しかし、マローはマッカーシズムを冷静に批判した。そもそも、共産主義者だから追放するということ自体おかしいと思うけれど、百歩譲って、共産主義思想を持ちソ連のスパイであるという疑いがある軍人や官吏を、軍や役所から追放するというのならわかる。しかし、その「証拠」が「親族が共産主義者だという内部告発があった。」だけというのは、理由として不十分だと思う。
このような例が次々に起こっていた。
マローはこれを批判する。
恐れずにテレビ番組で意見をはっきり言い続けるマローも素晴らしいと思うし、軍からの圧力があったにもかかわらず、それをはねのけ、マローを守り抜いたCBSというテレビ局も、素晴らしいと思った。
こうして、1950年からアメリカを吹き荒れたマッカーシズムは、1954年には収まっていった。

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最後にこの作品を見た率直な感想を言わせてもらうと、マローの言っていることがまともすぎて、少々、説教臭く感じてしまった。
マッカーシズムとはどのようなことだったのか、テレビ報道はどうあるべきかを考えたい人にはお勧め度★★★★☆くらい。面白い映画を見たい人には★☆☆☆☆くらいかな。
「大統領の陰謀」も映画としては地味で面白くなかった。「スポットライト」は実に面白くて引き込まれたけど。
このあたりが、大衆に媚びない、主張する映画が抱える難しさだと思う。

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プロフィール

萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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