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萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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2 コメント

アラビアのロレンス

今日からブログを始めます。

1955年、昭和30年の生まれである。この年から神武景気となり高度成長期が始まった。
翌年の1956年の経済白書には「もはや戦後ではない。」と記述され、流行語となった。
私が育ったのは、神奈川県津久井郡という田舎で、「となりのトトロ」のメイちゃん、さつきちゃんが暮らしていた家のように、土間に台所があり、母はカマドでご飯を炊き、七輪で味噌汁を作っていた。手押しポンプの井戸もあった。
 
そんな家にテレビが入り、東京オリンピックのころには、それがカラーテレビに変わった。
当時、淀川長治さんが解説する日曜洋画劇場や、水野晴夫さんの水曜映画劇場があり、田舎に住んでいる私でも、名作に触れることができた。

時は流れて、2014年。流行の映画を見ようと思えば、隣町のシネコンに行けば、夫婦割引2人で2000円、またはレイトショーで一人1200円で見ることができる。
NHKのBSのプレミアムシネマという番組では昔の名作を放映してくれる。
自宅から2分のところにはTSUTAYAがある。なんと旧作は1本100円で借りられる。

ありがたい世の中になった。
見たいと思えばいくらでも見ることができる環境にあるのだ。

そこで決めた。徹底的に見てやる。1960年代の古いものから、流行の新作まで。

そして、特に、その映画ができた後に生まれた若い世代に、名作を紹介したい。

で、手始めに、デビット=リーン監督の「アラビアのロレンス」と「ドクトル・ジバゴ」を借りてきた。
近所のTSUTAYAだけれど、きちんと在庫があって、お店の人がDVDの盤を磨いてくれた。

アラビアのロレンス
1962年のイギリス映画。
私たちの世代は誰もが知っている有名な作品。
砂漠をラクダに乗って駆け抜けるロレンスがカッコ良く、戦闘シーンも迫力があり、アカデミー賞の作品賞となったののもうなずける。

しかし、昔、テレビで放映されたときに、なんとなく見ていただけの当時の自分が、きちんと時代背景や、ロレンスが目指していたこと、そして現実の結果がどうなったのかということを理解していたかというと、まるで分っていなかったというと言うしかない。

現在、社会科教師をしていて、世界史を教えているという私としては、若い世代に、基本的な歴史の知識を持ったうえで、この作品を見てほしいと思う。

時代背景
第一次世界大戦、連合国側のイギリスは、同盟国側のドイツ、トルコ(オスマン帝国)と戦っていた。当時のトルコはかつての大帝国としての領域は縮小されていたとはいえ、シリア・イラク・アラビア半島を領有していた。
そして、そこでは、長い間、トルコ支配に甘んじていたアラブ人が、国家建設を目指して民族的な動きを見せていた。
トルコを相手に戦争をしているイギリスは、当然、アラブ人の勢力を利用しようとする。
そんなイギリス軍の中で、アラブ人の立場に立って行動したのがロレンスだ。

登場人物および配役
主役のロレンスにピーター・オトゥール。
ハウェイタット族の首長アウタ・アウ・タイがアンソニー・クイーン。映画「道」の中でジェルセミノを捨てて行った旅芸人のゼルビノを演じた俳優。
架空の部族ハリト族のアリはオマー・シャリフ。ドクトル・ジバゴだ。

世界史教師の補足説明
フセイン・マクマホン協定(1915)とサイクス・ピコ協定(1916)という用語は、映画の中でも出てきた。この2つの協定と、この映画とは直接関係ないけれど、バルフォア宣言(1917)の内容は理解しておきたい。
イギリスは、アラブ人に対して、戦争協力を条件に独立の承認を約束し、一方で、ユダヤ人の資金協力を期待して、建国の支援を約束した。さらに、フランス、ロシアとはこの地域の領土分割の約束までしていたのだ。
この3つが第一次世界大戦中にイギリスが行った3つの矛盾する約束。秘密外交がもたらした弊害だ。

さらに。
映画の中に出てくるファイサルとは、フセイン・マクマホン協定を結んだハーシム家のフセインの3男。父フセインは、1916年、アラビア半島西岸にヒジャーズ王国を建国するが、これは、1924年に、サウード家のイブン=サウードに滅ぼされてしまう。その後、息子のファイサルは1932年にイラク王国を建国する。

そして、サウジアラビア王国を建国したサウード家のイブン=サウードと、イラク王国を建国したハーシム家のファイサルの反目という構図が出来上がる。

以上、話がそれてしまった。
が、、アラブの歴史の展開には、アラブの中での部族間の対立と、それにからむ大国、当時でいえば、イギリスとの関係がおおきくかかわってくる。
現在のシリアに置き換えればアサド政権と反政府勢力の対立、それに絡むアメリカとロシアの駆け引き。
状況は混迷を深めるばかりである。

なんでそんなことになったかということは、歴史を勉強して知るしかない。

そして、とにかく「アラビアのロレンス」はまちがいなく、名作。
映画を見ることも、学ぶことの入り口になると思う。




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コメント

宮坂康子 2021/09/24 15:37  編集 URL

アラビアのロレンス

 昨夜アラビアのロレンスをとても久しぶりに観ました。
最初に観たのはちゅうがく3年生か高校1年生の時でした。その時はピーター・オトッールの青い眼だけが印象的で、内容は何も理解していなかったのです。
今回改めて観て、もっと時代背景や政治的な事も知りたくなり
先生のページにたどり着きました。
これからも先生のページを頼りに色々な名画を深く観てみたいと思うようになりました。
このページを作っていただき感謝です。
萩谷功枝 2021/11/13 07:58  編集 URL

Re: アラビアのロレンス

ずいぶん日が経ってからの返信ですみません。コメントありがとうございました。私の最初のブログ記事を読んでくださったので、私も久しぶりに最初の記事を読み直してみました。自分自身もすっかり忘れていた最初の頃の気持ちを思い出しました。興味の対象はその時々で、冷戦、戦争映画、ナチ犯罪、黒人差別、韓国現代史、etc.映画を見て、調べて,書くという作業を通して、世界史の勉強をしています。宮坂さんのコメントがとてもうれしくて、励みになりました。今後も、映画から世界史を考えていきたいと思います。
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