『招かれざる客』

招かれざる客
1967年のアメリカ映画。分類としては ドラマ映画/コメディ。

自分の娘が結婚相手に黒人男性を連れてきたら、親はどんな反応をするのだろうか?
新聞社主で知的なリベラリストとして、普段から「人種差別反対」の立場をとっている父親が、いざ、自分の娘のこととなると、その立場を貫けるのかどうか。

ジョーイは、「肌の色で人を差別してはいけません。」という両親からの教育を受けて育った、天真爛漫で屈託のない、若くてかわいらしい白人女性。
そんなジョーイが黒人男性のジョンと恋に落ち、結婚を決断する。

自分の親は、相手が黒人だからという理由で結婚に反対するような人たちではない。」とハナから信じきっている。

結婚相手のジョンは世界的に有名なレベルの黒人医師
妻子を事故で失っている。
優秀で落ち着いていて、経歴・人格ともに文句の付け所はない。
自分が黒人であることで、結婚相手の両親がどのような反応を示すだろうかについても十分予測し、配慮するだけの大人らしさも持ち合わせている。

娘の幸せを願う優しい両親だが、娘が黒人男性を連れてきて、「結婚します」と言ってきたら、当然、戸惑うだろうなと思う。

しかも突然。
そして時間の余裕がなさすぎ。
突然サンフランシスコの実家にやってきて、その日の夜にはニューヨークに出発するという。
「このあとジュネーヴで会議があって、それからアフリカの医療に従事するから、今日しかなかったのよ。」  
全く悪気のないジョーイ。
親の立場からすると、根回しはしておいてくれと言いたくなる。
有無を言わせず、テンポよく事が進展していく様子がこの作品の面白さなのだろうけれど。

父親のマットがいい。
戸惑い、うろたえる。

ジョンの両親もロサンゼルスから駆け付ける。
あまりの急な話に、息子の相手がまさか白人女性だなどとはまるで考えもせずに。
空港に出迎えに来たジョーイを見て、これまた戸惑う。

登場人物がみんな優しくて、いい人たち。
どちらの両親も娘と息子の幸せを願っている。
しかし、そこに立ちはだかる「人種の違い」という壁。
ジョンは、人格も社会的地位も経済力もすべてを持ち合わせている素敵な男性で、二人は愛し合っている、という文句のつけようのない設定。
さて、双方の親の理解が得られるのかどうか。

***********

ジョンを演じたシドニー・ポワチエについて。
アメリカの黒人男優として初めてアカデミー主演男優賞を受賞した。(『野のユリ』1963年)
黒人男優の先駆者的存在。
が、一方で、黒人たちからのシドニー・ポワチエの評価には厳しいものがあるという。
「素直でおとなしく、礼儀正しい黒人という、あくまで白人が望む黒人像を演じた。」と。 

そうか、そういう言い方をされてしまうのか..。

ただ私は思うのです。
1960年代、黒人差別を批判し、反対闘争を指導したマルコムXやキング牧師は、世の中を大きく変えた。
しかし、そうしたストレートなやり方ではなく、白人社会の中に入り込んで、実力を認めさせていくというやり方もある、と思うのだ。
スポーツの世界でのカール・ルイスやマイケル・ジョーダン、音楽の世界でのオスカー・ピーターソンやマイルス・デヴィスの存在があったから、黒人が各分野で認められるようになり、活躍できるようになった。
シドニー・ポワチエも同じ。
100mを何秒で走れるかというわかりやすい世界ではなく、映画俳優というのは、出演した作品の役どころや、その作品の意図や、制作した側の(差別についての)意識も反映されてしまうので、突っ込みどころはいろいろ出てくると思うのだが、知的でかっこよくて演技がうまくて魅力的というのは否定できないだろう、と言いたい。
シドニー・ポワチエが映画界における黒人の存在を切り開いていったから、それに続くデンセル・ワシントンやモーガン・フリーマンのような名優が生まれたのだと思う。

********
キャサリン・ヘップバーン

ジョーイの母親を演じたがキャサリン・ヘップバーンと父親を演じたスペンサー・トレーシーについて。
この作品で2人ともアカデミー賞にノミネートされ、キャサリン・ヘップバーンは主演女優賞を獲得。スペンサー・トレーシーはこの作品の公開前に亡くなり、これが遺作となった。
この2人は、スペンサーが宗教上の理由で離婚できなかったため、正式な結婚をしていないが、20年以上もパートーナーして暮らしたという。
スペンサーの健康状態が悪化したときキャサリンは5年間の休養を取り、看病した。
ジョーイの両親役として素敵な2人だったが、実生活でも同様の関係だったというわけだ。
さらに、ジョーイを演じたのはキャサリン・ヘップバーンの実の姪。

以上、wikiで調べたことです。
 
*******

BLM運動が盛り上がっている現在、人々の意識から人種による差別・偏見をなくそうという動きが高まっている。
こうした流れの中で、※「アメリカの黒人差別を理解するうえで見るべき映画」のリストに上にこの作品が上がっていたので、Amazonプライムで、299円でレンタルして見ました。
※2020.6.17 の渡邊裕子さんの記事です。
https://www.businessinsider.jp/amp/post-214663

1960年代の作品が、検索して見つければ、即、鑑賞することができるような便利な世の中になったことに感謝です。
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

最新記事
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

検索フォーム
リンク
QRコード
QR