『MINAMATA』

MINAMATA
MINAMATA

2020年のアメリカ映画。日本での公開は2021年9月。
水俣病の実態を撮影・記録したフォト・ジャーナリスト、ユージン・スミスを描いた作品。

見る前から、タイトルでストーリーの展開のおおよそは見当がつく。
水俣病患者の悲惨さ、企業との闘争、それを写真に撮影して世界に訴えた写真家を描いた、いわゆる社会派作品なのだろうなと。
そしておそらく暗くて重い作品かな、と。
こう勝手に予想して、一応みておこうかなというくらいの気持ちで10月3日(日)、朝一番で近所のTOHOシネマズに行ってきました。

良かったです。とても。
予想をはるかに超えて、心にグッときました。
見に行ってよかった。見終わった後、心からそう思いました。

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今、「この映画は、何がよかったのだろうか?」ということについて考えている。

ひとつは、この作品が、ドキュメンタリー作品ではないということによるかなと思う。
ドキュメンタリーと銘打っていたら、事実しか取り扱うことができない。
「史実にもとづくストーリー」とすれば、フィクションを挿入することもできる。
それにより、ユージンの気持ち、水俣病被害者とその家族の気持ち、折れそうになりながらも抗議活動を続ける支援者の人たちの気持ちを細やかに描くことができたのだと思う。
(ユージンとチッソの社長との駆け引きや、ユージンたちの活動を妨害する出来事のなかに、実際にはなかった創作も含まれている。)
だからとても分かりやすい。

そして、俳優陣が素晴らしかった。
私は、画面に登場した時間はごくわずかだった浅野忠信の静かな演技に強いインパクトを受けた。
彼は胎児性水俣病の智子の父親マツムラ・タツオを演じた。
ユージンは水俣に到着してすぐにマツムラ家を訪れる。そして、マツムラに撮影の許可を願い出る。
マツムラの答えは、「勘弁してください。」だった。

そうか。
被害の発生した水俣という地域の中で、この人たちは、ひっそりと暮らしているのだ。
智子を世の中の好奇の目にさらしたくないのだ。

穏やかな口調で答えたマツムラ。
どれだけの怒り、苦しみを背負っているのだろうと思わずにはいられない。

そして、次第に水俣の人々がユージンに心を開いていく。
写真家と被写体の信頼関係があって、初めて本物の写真が撮れる。
入浴する智子と母(注1)」はユージンがとった写真の中で最も有名な写真であるが、今まで私は、なぜこのような写真が撮れたのかということまで考えたことはなかった。
写真家がいきなり水俣に行って、偶然に撮れた一枚ではないのだ。


この映画は、見た者が、被害者の心情がどのようなものであったかということにまで思いを至らせるようになる、そういう作品だと思った。


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注1:「入浴する智子と母」の本物の写真は、現在では見ることができません。ユージンの妻アイリーンが1998年に封印しました。理由は「(この写真を)もう休ませてあげたい。」ということでした。

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萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

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