映画・本、最新のニュースを通して世界史を考えていきましょう。

プロフィール

萩谷功枝

Author:萩谷功枝
世界史教師をしています。

映画や本の紹介、最新のニュースから感じたこと、など自分の日常を通して、世界史のことを考えていけたらと思います。

最新記事

全記事表示リンク

更新通知登録ボタン

更新通知で新しい記事をいち早くお届けします

0 コメント

オバマ元大統領のオススメの14作品

映画好きのオバマ元大統領が毎年年末にその年のお気に入り映画のリストを発表している。
2018年には「万引き家族」もランクインしているし、2019年の「パラサイト」、2020年の「ノマドランド」は作品賞を獲得していることから、彼が何を好きなものリストに挙げてくるか、注目されるようになっている。

2021年の年末に発表されたのは以下の通りである。
オバマさん


『ドライブ・マイ・カー』
 『サマー・オブ・ソウル(あるいは革命がテレビ報道されなかった時)』
◎『ウエストサイド・ストーリー』
□『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
 『Pig』
□『PASSING/白い黒人』
 『The Card Counter』
□『ユダ&ブラック・メシア/裏切りの代償』
 『The Worst Person in the World』
 『Old Henry』
◎『最後の決闘裁判』
□『マクベス』
 『C’mon C’mon』(日本での公開は2022年4月22日)
◎『アイダよ、何処へ』


以上、14作品。
(今年のリストには作品賞をとった『CODA あいのうた』と『ベルファスト』が入っていないのが残念ですが、見逃していたのかな。)

こうしたリストはありがたい。
オバマさんが気に入った映画なら私も見てみたいと思う。
リストにしたがって、映画館で見られるものは見に行き、上映がすでに終わってしまったものはネット配信で見てみた。(上記リストのうち、◎は映画館で見て、□をネット配信で見た作品。)
今回、『マクベス』を見るために、AppleTVの3か月お試し無料期間を利用した。(忘れずに解約手続きをしないと、月額600が引き落とされるので注意せねば。)


さて。
すでにいくつかはこのblogで書いているので、今回は、□の『マクベス』、『ユダ&ブラック・メシア』、『PASSING』の3作品について考えてみたいと思う。

********************
『マクベス』
マクベス

監督:ジョエル・コーエン
出演:デンセル・ワシントン(マクベス)
フランシス・マクドーマンド(マクベス夫人)
言わずと知れたシェークスピアの四大悲劇のひとつ。舞台劇を映画作品として仕上げた。
マクベスを黒人俳優のデンセル・ワシントンが演じた。このキャスティングがすごいと思う。
これが『オセロー』ならば、ムーア人のオセローをアフリカ系の俳優が演じるのは当然だと思う。
しかし、『マクベス』なのだ。
地中海沿岸のヴェネティアならいざ知らず、11世紀のスコットランドに黒人の王がいたはずがない。
それなのに、デンセル・ワシントンの迫力ある演技は、まったく違和感がない。
日本でもの平幹二郎や唐沢寿明がマクベスを演じているではないかといわれてしまうかもしれないけれど、日本の舞台演劇を日本人が演じるのと、アメリカ映画での『マクベス』をアフリカ系俳優が演じるのは意味が違う。
これも、果敢な試みなのだろう。
そしてデンセル・ワシントンのマクベスは、素晴らしかった。

マクベス夫人のフランシス・マクドーマンドもまたすごい。(彼女は『ノマドランド』でアカデミー主演女優賞を獲得している大物女優で、しかも、『マクベス』の監督のジョエル・コーエンの妻。雰囲気が大竹しのぶによく似ている人だなと思う。)

勇敢なスコットランドの武将であったマクベスが魔女の予言と夫人のそそのかしに心を乱され、破滅に向かっていく。野心・不安・罪悪感・狂気。感情が目まぐるしく変化していく。役者としては演じ甲斐のある役どころだろう。

シェークスピアの戯曲は本で読んだことはあったけれど、演劇を見たことがなかったので、実に面白かった。原作に忠実で、舞台劇を映画にするという試みも成功していると思った。



『ユダ&ブラックメサイア/裏切りの代償』
ユダ&ブラックメシア

フレッド・ハンプトンという黒人指導者の名前を今回初めて知った。
日本ではほとんど知られてない名前である。
なぜか?
それは、彼が世界に広く知られているキング牧師レベルのリーダーになる前に、この世から消し去られたからである。
若い芽を摘む。将来有望な若者をつぶす。
自分たちにとって都合の良い社会を維持するためには、脅威となりうる人物をあらかじめ消してしまう。。
それが一番確実なやり方なのだ。
そのために組織の中に裏切り者を送り込む。
裏切り者の作り方は?
弱みを持つものを利用する。

人種差別への抵抗運動をつぶそうとするFBIのやり方がよく分かった。

副題の「裏切り」とは、黒人であるオニールがハンプトンを裏切るということなのか、それともFBIを裏切って、黒人としてハンプトンに協力するということなのか?
オニールがどういう行動に出るのかがわからなくて、最後まで楽しめた。



『PASSING/パッシング』
パッシング

passingという言葉を知らなかった。

passingとは、「通過」と呼ばれる、白として認識されるのに十分な肌の色をもっているアフリカ系アメリカ人をさす。さらに、「黒人であるのに白人になりすまして生きている人」という意味が込められる。
「見かけは白人だけれども純粋な白人でなく、黒人の血が混じっている人」の存在を初めて知った。混血の場合、黒人としての特徴が強く出ると思っていたので、一見わからないという人がいるということを考えたことがなかった。

現在ですら差別はなくなっていないのだから、1920年代のアメリカ社会において、白人として生きるか黒人として生きるかでは大きく違ってくる。
見かけは白人なら、白人として生きたほうが有利だから、その選択は当然だと思うのだが、それは自分を偽るとか隠すということになり、生きていてしんどくなるのだろう。

差別や偏見がない社会だったら、偽ることも隠す必要もなくなる。
あるがままの自分で生きられる社会。
そういう社会で私たちは生きたいと思う。
めざす方向はそれだなと、1920年代のアメリカを描いた21世紀の白黒映画をみて、そう思った。

********************

以上、オバマさんのオススメ映画14作品のうち3作品について書きました。
オバマさんが選んだ気持ちがわかる気がします。
逆に、グアンタナモの刑務所を舞台とした「モーリタニアン」がリストに入ってこないのは、ご覧になっていないのでしょうか?
残念。(見ていたとしても、やぶ蛇になるから選べないか。)
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

検索フォーム

QRコード

QR

最新記事

My Small Land
ダ・ヴィンチは誰に微笑む      絵画の価値とは?
ダンケルク
ひまわり
C'mon C'mon / カモン カモン
バットマンにはまってしまった
英雄の証明
親愛なる同志たちへ
オバマ元大統領のオススメの14作品
今年のアカデミー作品賞ノミネート作品を見てみた
ベルファスト
善き人のためのソナタ
ウインター・オブ・ファイアー :   ウクライナ 自由への闘い
赤い闇 スターリンの冷たい台地で
博士と狂人
恋愛映画を見るための感受性
『クレシェンド 音楽の架け橋』
『オペレーション ミンスミート -ナチを欺いた死体-』
『白い牛のバラッド』
『国境の夜想曲』
『ドライブ・マイ・カー』
『ウエストサイドストーリー』
『ルース・エドガー』
『最後の決闘裁判』
『燃えよ剣』
『モーリタニアン/黒塗りの記録』
『MINAMATA』
『アイダよ、何処へ』
『終戦のエンペラー』
『OSLO/オスロ』
『砂漠の鬼将軍』
グッドナイト & グッドラック
ナチ犯罪追及をテーマにした作品5つ
歴史を変えた新聞報道
『The Lady  引き裂かれた愛』
『三島由紀夫 vs 東大全共闘』
『罪の声』
KCIA 南山の部長たち
韓国現代史がわかる作品10選
夫婦で安心して楽しめる作品 :      スポーツもの編
『コリーニ事件』
[脱出モノ」ベストの続き
『1987 ある闘いの真実』
私の中での「脱出モノ」ベスト
『在りし日の歌』
『シカゴ7裁判』
『2人のローマ教皇』
『存在のない子供たち』
『工作 黒金星(ブラック・ビーナスと呼ばれた男)』
『判決、二つの希望』