高校世界史の教科書10冊中すべてに記載されている“ドレフュス事件”を描いた作品です。
といっても、世界史が受験科目でなかった方にはあまりなじみがないかもしれません。
ドレフュス事件とは、19世紀末、フランス第3共和政期に起きたユダヤ人の冤罪事件です。
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ドレフュス事件の概要
1894年、フランス陸軍の誰かが、ドイツに機密を漏洩したことが発覚した。
犯人捜しの結果、ユダヤ系のドレフュス大尉に容疑がかかり、軍法裁判の結果、有罪が確定し、ドレフュスは軍籍を剝奪され、軍刀はへし折られた。
(この場面を描いた作品冒頭の映像は、教科書に載っている挿絵と全く同じで、既視感があった。)
ドレフュスは、無実を主張するが、終身刑となり、フランス領ギアナの「悪魔島」へ送られた。
その後、この作品の主人公であるピカール大佐は、筆跡鑑定の結果、ドレフュスの無実を確信し、巨大権力と闘う。
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鑑賞後の感想:
ピカール大佐の調査により真犯人が判明しても、国家権力というのは、なかなか間違いを認めようとしない。
いったんドレフュスを有罪としてしまったのだから、ドレフュスの無実を認めるということは、誤審を認めるということになるからか。
証拠の捏造・文書の改竄をしてまで、都合の悪い事実を隠蔽しようとする。
そして、ついに証拠の捏造に関わった者に自殺者まで出る。
ウソはつきとおせないのだ。
とはいうものの、真犯人のエステラージなる人物は、早々に国外に逃亡し、安穏な生活を送ったという。一方、無実の罪で「悪魔島」に送られたドレフュスは不名誉を背負ったまま劣悪な環境で5年間も収監され、1899年、有罪と認めたうえでの特赦で自由の身になれたのだった。
ドレフュスが無罪となったのは1904年。事件発覚から10年後のことだった。
理不尽だ。
ストーリーとしては、真犯人のエステラージが逮捕されるとか、1899年の裁判でドレフュスの無罪が確定すれば見ていて気持ちいいのだけれど、これが史実なのだから仕方ない。
ドレフュスを擁護しようと国家権力に立ち向かい、根強い反ユダヤ感情のはびこる当時のフランスの世論と闘った、ピカール大佐や文豪ゾラの正義感に感服。
実を言うと、仕事帰りのレイトショーで見たせいなのか、登場人物が口ひげを生やした軍服の男性でばかりで、誰が誰だかわからなくなりそうになったからなのか、中盤で、眠気がきた。後半、シャッキとできましたが。
世界史好きの人におすすめの作品。
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