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『フィラデルフィア』

フィラデルフィア


『フィラデルフィア』
20年ほど前、「エイズ」という病気及び「ゲイ」に対して人々がどういう反応を示したか、それが今日、どのように変化してきたのか、ということを考えることができた。

この作品は、エイズを発症したことで法律事務所を解雇されてしまったアンドリュー=ベケット(トム=ハンクス)が、これを不当解雇であるとして、一流法律事務所を相手取って訴訟を起こすという話。
法律事務所側は、エイズ発症が理由ではないとするが、そのことで解雇されたのは明らか。エイズとゲイに対する偏見の中で、毅然として裁判を戦っていくアンディ―と、彼を支えた黒人弁護士のジョー、さらに息子を誇りに思うと言う両親をはじめとする家族の愛情がいい。
Wikiで調べたら、エイズというのは、1981年に症例報告がされたのが最初ということだ。感染者にゲイや麻薬常習者が多かったことから、この病気に対する偏見は強く、また発症すると死に至ることから恐れられた。
この作品の中でも、ジョーが、アンディからの弁護の依頼を断り、握手をしてしまったことが気になって医師を訪れる場面がある。赤ちゃんが生まれて父親になったばかりの彼は、エイズ患者と接触したことで、感染したかもしれない、赤ちゃんにうつすかもしれないと不安になったのだ。そして、「HIVウイルスは体液からしか感染しない。」という説明を受けても、「そんなこと言ってあとから洋服からでも感染することがわかったなんて言わないだろうね。」とつぶやく。
ジョーのような弱者の味方をする社会派弁護士ですら、触ったくらいでうつるのではないかというエイズに対する恐怖感を持っていたことがわかる。

その後、ジョーは裁判を孤独に戦おうとしているアンディと図書館で遭遇し、弁護を引き受ける。このことでジョーは、居酒屋で「ゲイは嫌いだ!」というようなあからさまな言葉を投げつけられ、お前もそうなのかというような好奇の視線にさらされる。

このことについては、ここ20年で大きく変わったと思う。
LGBTという言葉が一般的な用語となり、市民権を得てきたということだ。
それまでは、LesbianやGayの人たち、および、BisexualやTransgenderの人たちは「正常ではない」という価値基準の下で、差別や偏見にさらされてきた。
LGBTという用語は、そうした人たちを肯定的に表現する用語なのだそうだ。
そうした動きのもとで、渋谷区では、2015年に同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める「パートナーシップ証明書」を発行する条例が可決・成立。世田谷区でも同様の制度が発足している。
一定の割合でLGBTの人が存在する。NHK総合「ニュース深読み」ではその割合を「20人に一人」としていた。そうであるなら、排除するのではなく、存在を認めていきましょう、という動きになってきたということだ。

作品の途中で、「差別とは、個々人を公正な判断に基づかず、特定な集団に属するがゆえ不当に扱うこと。」という言葉が登場する。
人は、自分と違う属性をもつ者に対して理解が及ばないものだし、社会的に弱者とされる人に対して差別的な態度をとってしまいやすいものだと思う。
そして、いまだに差別はいくらでも存在している。しかし、健全な社会、成熟した社会とは、少数派、社会的弱者とされる人たちを排除せずに容認できる社会であり、これが目指すべき方向だと思う。
自分は差別をしていないと言えるかというと自信はないし、「容認」を迫られる場面に遭遇していないだけかもしれない。しかし、少なくとも、差別はいけないことなのだという価値観は持っていたいと思う。

この作品の題名の『フィラデルフィア』は、アンディが生まれ、暮らした街。
フィラデルフィアの意味はギリシア語で「兄弟愛」。
作品の途中で出てくる次の言葉は美しい。
“(フィラデルフィアは)兄弟愛の街。自由誕生の街。独立宣言がなされた街だ。
独立宣言の言葉は、「普通の人間が平等」ではなく、「人間は皆、平等だ。」“
(世界史教師的にいうと、独立宣言の時点での「人間の平等」には、女性、先住民、黒人は含まれていないけれど。)
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