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萩谷功枝

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世界史教師をしています。

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『パリよ、永遠に』

6月4日(土)、朝のテレビを見ていたら、セーヌ川が洪水で水位が上がってしまい、ルーブル美術館とオルセー美術館が7日まで休館というニュースが流れた。美術品が浸水でやられないように移動させているためだとか。
ちょうどこの数日の間にパリを訪れてしまった観光客にとって残念この上ない話だろう。
が、自然現象なのだから仕方がない。
そしてセーヌ川の洪水も、おそらく数日でおさまるだろう。また、もとに戻る。
しかし、過去に、この美しいパリという街、ルーブルに所蔵されている美術品、これらすべてが人間の手によって破壊される可能性があったのだと知ると、今現在、それが存在しているというだけで、ありがたいことだと思えてくる。

第二次世界大戦中、パリはドイツ軍に占領されたが、連合軍側のノルマンディー上陸後の進撃により、1944年8月25日に解放された。
恐ろしいことに、実はこの数日前、ヒトラーはパリの破壊を命じていた。
戦略的にパリを破壊しても何の意味もないというのに、手放さざるを得ないならば壊してしまえという理由で。
結果的に、パリは破壊されなかった。
ドイツ軍は破壊をさけ、パリをほぼ無傷で明け渡した。
そこに、どのような事情があったのかが、この映画を見てよくわかった。

『パリよ、永遠に』  
2014年のフランス映画。 日本での公開は2015年3月。

敗戦濃厚となった1944年8月、ヒトラーはパリの破壊を命じる。セーヌ川に架かる橋を爆破し、それによってせき止められたセーヌ川の氾濫で、パリを洪水にし、さらに、ノートルダム聖堂、ルーブル美術館、オペラ座、コンコルド広場、廃兵院、エッフェル塔、...これらに爆弾を仕掛け、爆破するというもの。
計画のすさまじさに驚いた。まさにパリ壊滅作戦だったのだ。
パリ占領中のドイツ軍のコルティッツ将軍も実はそんなことはしたくはない。
しかも、コルティッツは、末期症状のヒトラーの目つきがおかしく、よだれを垂らしているような様子を見ていて、こいつの命令には従いたくないと思っていたところだったのだ。
しかし、軍において命令は絶対であり、総統の命令には逆らえない。
さらに、家族を人質にとられていて、命令に背いた場合には家族は処刑という法まで作成されてしまっている。
(人をがんじがらめに縛るヒトラーの手法は卑怯であり、天才的だ。)
100万~200万のパリ市民の犠牲者をだすであろうという計画の実行を決断しなければ家族は守れない。
そのはざまで苦しむコルティッツ将軍。それを説得するスウェーデン総領事ノルドリンク。


この作品はシリル=ジュリーの戯曲「Diplomatie」を脚色したもの。
私の頭の中では、国際関係は力で決まる、という思いがあり、外交の効力を信用していない面があった。
が、国際関係も人と人の関係が作るものであり、トップ同士の人間関係やトップの人格・人間性が反映されるのもまた当然である。
ドイツの敗戦が濃厚になっていた時期であったとはいえ、タイミング的にはコルティッツがパリ壊滅作戦の実行を決断してもおかしくなかった。一歩間違えば、そうなっていた。
そうならなかったのは、コルティッツとノルドリンクの信頼関係であり、ノルドリンクの粘り強い外交努力であったと言える。

この映画は、全編のほとんどがパリのホテルの一室での二人のやり取りで、戦況の説明には白黒の実写フィルムをはさむだけで、派手な戦闘シーンなどはない地味な作品だ。
しかし、セリフの一つ一つに重みがあり、ぎりぎりのところに立たされている二人の立場もよくわかり、興味深く見ることができた。
ラストのセーヌ川からの景色が流れるシーンを見たとき、やはり、「パリよ、永遠に」と思った。

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