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萩谷功枝

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世界史教師をしています。

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『THE WAVE ウェイヴ』

独裁制は危険な国家体制である。
第二次世界大戦中のドイツの人々が、こぞって「ハイル ヒトラー」と唱和した時代は、間違っていたとしか言いようがない。(とんでもない人物にみんなが従ってしまったのだから。)
そして、第二次世界大戦という悲惨な歴史を体験した人類は、二度と同じ道を選ぶことはない、と思いたい。
が、そんな考えは「甘い」ということをわからせてくれる作品だ。
独裁制は5日で成立する!!!
これはアメリカのある高校で実際におこったことをもと製作されたドイツ映画である。

***   ***   ***   ***   ***

ある高校での実習授業。
「無政府主義」、「独裁制」などのテーマのなかから、自分が興味のあるテーマを選択し、それについて、考え、議論し、またそれを模擬体験してみるという講座が始まる。
その教育目的は、そうしたことを体験することで、「民主主義の良さを認識する」ことのようだ。

教師のライナー・ベンガーも最初から「独裁制」の講座をやりたかったわけではない。彼は「無政府主義」がやりたかったのだ。が、別の教師が「無政府主義」をやることから、彼は「独裁制」の講座を担当することになる。
生徒たちも、単位取得目的だけで集まってくる。どうせとるなら、面白そうな講座の方がいい、という程度の動機での参加だ。

当初、生徒たちは、「ドイツでは独裁制はありえないか?」の問いに、「当然だ。時代が違う。」ど答えている。
そして、あまり真剣でない態度での受講が始まる。

最初のコマでの、独裁制の定義や独裁制が成り立つための条件を考えるあたりは、実にいい感じの授業だった。
そのうちに、では独裁制を体験してみよう、ということになり、その授業の中では、教師のライナーを「ベンガー様」と呼び、発言するときは起立して、というルールが作られる。
みんなで歩調をそろえての足踏みをするあたりから、教室全体に一体感が生まれてくる。生徒たちは、ベンガー様の指導のもと、だんだん盛り上がってくる。
「WAVE」というグループの名前をつけ、服装もみんなでお揃いにし、自分たちのあいさつのやり方も作っていく。
この盛り上がりに違和感を感じて歯止めをかけようとしたカロは仲間から排除される。

自信なさげで、スクールヒエラルキーも低そうなティムが生き生きとしてくる。ベンガー様に忠誠を誓うようになる。彼にとって{WAVE}が心のよりどころになってしまったのだ。

実習授業での集団にすぎなかった「WAVE」がだんだんおかしなことになっていく・・・・。

この作品はその過程が実に見事に描かれている。
批判するものの発言を軽んじ、盲従するタイプの者の意見を褒めちぎることで、集団の方向性を操作することは可能なのだ。

***   ***   ***   ***

人は、チームで力をあわせた時に一体感、達成感を感じることができる。
スポーツや仕事でチームプレーを行う者は、それを得たいから頑張る、とも言えると思う。
みんな一緒に一つのことに向かってまとまるのは気持ちいい。

しかし独裁制においての一体感は危険だ。

何が違うのか?
それは、メンバーがちゃんと自分の頭で考えているか、リーダーに盲従するだけなのかの違いだと思う。
考えることもせず、批判することもなくなったらその組織は終わりだ。
異分子を排除することで、従うものだけの集団になってしまったら、独裁者の意のままの集団になってしまう。
もう誰にもリーダーの暴走を止めることのできない制御不能の集団になっている。

そうなったら終わりだよ、ということを知ることができる作品だった。

『THE WAVE ウェイヴ』  2008年の映画
2015年のノルウェー映画で津波に襲われる恐怖を描いた『THE WAVE ザ・ウェイブ』という作品があるので要注意です。
私は間違えてしまいました。これをきっかけにNetflixを利用することを始めました。1時間46分の作品を、病院の待ち時間を利用して、スマホ画面で観ました。

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