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萩谷功枝

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NHKスペシャル 「戦慄の記録 インパール」

2017年8月15日のNHKスペシャルは、「戦慄の記録 インパール」だった。

アジア太平洋戦争の中で最も無謀と言われたインパール作戦。
まったくする必要のなかったとされる作戦
補給を度外視した無謀な作戦
3万人の犠牲者が出た
この作戦を擁護するような表現は一つもない。

戦後72年たった今、このような番組が完成したことは、今後、戦争を考える上で大きな意味を持つと思った。

インパール作戦とは太平洋戦争末期の1944年3月、悪化していく戦況を何とか打開したいと、インド北東部のインパールにあるイギリスの拠点をビルマ(現ミャンマー)側から行軍して攻略しようとした作戦だった。
470kmの行軍。その行程には川幅600mのチンドウィン河、2000M級のアラカン山系、世界一の豪雨地帯と言われる悪路が立ちはだかっていた。
途中、食料を調達できるような豊かな村もなく、後方からの補給もない。

結局、インパールまで行きついた兵士はなく、作戦は4か月で中止されるが、戦死者の6割が作戦中止後の撤退中の病死・餓死であったという。
作戦の推進者は第15軍司令官牟田口廉也中将。
彼は、補給の面からこの作戦は不可能だと進言した部下を更迭し、作戦を実施した。
作戦開始後も、各部隊から芳しくない報告、作戦の中止を求める声が上がっても、それを怒号で握り潰し作戦を続行した。
4か月後の中止はあまりにも遅すぎた。
しかも、牟田口は作戦失敗の責任をとっていない。
作戦を大本営の希望であった、と語っている。


この番組では、13577人分の戦没者名簿をもとに一人一人の死を、場所・日時を特定し検証している。
また、生き残った元兵士の方々への取材を行い、その方々に証言をしてもらっている。

この番組を見て思ったのは、「よくぞ作った、よくぞ間に合った。」ということである。
元兵士の方々の生の声がとれたことは大きい。
すでに高齢となられている元兵士の方々。
番組の製作も、時間との戦いであったはずである。

特に牟田口に直接仕えていた齋藤博圀さんが存命で、番組のラストに登場して下さったことは大きい。90歳を超えた高齢となり、施設で穏やかな日々を過ごされていたであろう齋藤さんがインタビューに応じ、かつてのことを語り始めた時、わなわなとふるえるほどの感情の高ぶりをみせ、「悔しいです。」とおっしゃった。
どれほどの思いがそこにあるのかということが、見ているものに伝わった。

齋藤さんには牟田口のことを許せないという思いがあるのだろう。
それは、牟田口が上官に「5000人殺せばとれる」というのを聞いてしまったからだ。
はじめは敵を5000人倒せば拠点をとれる、という意味かと思ったという。
ちがった。作戦遂行には日本側の5000人の犠牲が必要だという意味だった。
しかし、それを「5000人殺せば」という表現を使うだろうか。
兵士を捨て駒としか考えていない非情さ。そんな指揮官のもとで戦う兵士はたまったものではない。

今まで、戦争であまりにも悲惨な経験をされた方々は、戦後、あまり多くを語らず、思いを封印してきたように思う。
しかし、近年、自身の寿命が後わずかになってきたと思う方々が語って下さるようになった。今語らないと、次の世代に伝えることができないという思いからだろう。

元兵士の方にすれば、思い出したくもないことだろうと思う。
余りにも悲惨な仲間たちの末路のことなど語りたくないだろう。
それを語って下さった。

私たちは、元兵士の方々の語ることを聞き、かの地でどんな悲惨なことが起こってしまったのかを知っておかなければならないと思った。

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