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萩谷功枝

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『ブーリン家の姉妹』

ブーリン家の姉妹 1

高校の世界史の「宗教改革」の単元では、ルターの改革、カルヴァンの改革、イギリス国教会の成立、対抗宗教改革の4つの内容を学ぶ。なので、世界史受講者ならば、イギリス国教会の成立については、どのような事情によりそういう展開になったのかは、基本的な知識ではある。
でもまあ、日本史受験だったから世界史はサボった(必修科目ですが)という方や、そんな内容は忘れてしまったという方のために。
(くどいかもしれませんが。)
英王ヘンリ8世はアン・ブーリンと結婚するために、王妃キャサリンとの離婚問題を起こす。離婚を認めないローマ教皇に対して、ヘンリ8世はローマ・カトリック教会から離脱して、国王至上法(首長法)を出して、イギリス国教会を成立させる。きっかけはアン・ブーリンが王妃になりたいからキャサリンとの離婚を迫ったという事情なのだが、結果的に、イギリスはローマ教皇の干渉の排除、王権の強化という目的を果たすことになる。

時代背景や重要人物の人間関係をつかんでおけば、ストーリーが理解しやすいので、以上の事情は頭に入れておくといいと思う。

それにしても。
「アン=ブーリンとは、こんな女だったのか。」と、ため息が出るような展開の作品だった。

この作品を、16世紀のイギリスの宮廷を描いた歴史ドラマとしてとらえることもできなくはないけれど、見終わってあと、時代設定を越えて、人間の生き方、女性の生き方をテーマとした作品なのだなとを思った。
アンとメアリーという性格から考え方からあまりにも対照的なブーリン家の姉妹を通して、人間にとって何が大切なのかを考えさせられる。

アン・ブーリン(ナタリー・ポートマン)が激しい。美貌と頭の良さを備えた彼女は、自分の才覚で事を思い通りに運ぼうとする。人を操り、人の善意も利用する。
さらに彼女は人としてしてはならないことをしている。
一つは妹のメアリー(スカーレット・ヨハンセン)が王の寵愛を受けている時、嫉妬からメアリーにつらく当たり、腹いせとばかりに許嫁のいるヘンリー・パーシーの気をひき、結婚式まで挙げてしまう。許嫁のいる男性を奪い取る、しかもそれをわかっていながら相手の気をひくというのはやってはいけないことでしょう。たまたま恋に落ちてしまったというのなら仕方ないかもしれないけれど。王の寵愛を受けられなかった不満をゆがんだ方向に向けてしまったとしか思えない。(この結婚の事実は、家族の配慮でなかったこととしてもみ消されるが。)
さらに最悪なのはメアリーが辛い妊娠期間を経て、ようやくヘンリ8世の子供を出産(しかも生まれた子は男の子だった)したその日に、ヘンリ8世の寵愛を受けメアリーを捨てさせてしまったこと。メアリーは(本人の希望したことでもあるが)せっかくイギリス王の子供を産みながら、宮廷を去り田舎で暮らすことになる。

その後、アンは自分が妊娠した時、助けが欲しく、妹との和解を求める。
このあたり、アンはメアリーを利用することしか考えていない。
メアリーはあれだけひどいことをされながら、関係修復に応じ、姉を支えようと決意する。実の姉なのだからという理由で。

この後のアンは自滅の道を歩む。歴史的にアンの末路はわかっていたけれど、まさに自滅だなと思う。人を圧倒するほどの美貌をもっていたとしても、人並み外れた才覚をもっていたとしても、人の心をあやつって思い通りに事を動かすことなど、できるわけないのだ。

歴史的にアン・ブーリンは有名だが、メアリーという妹がいたことは知らなかった。後にエリザベス1世となるアンの娘を育てた女性だ。
初めてこの作品を見た時はアンを中心にストーリーをおってしまったけれど、今回改めて見直し、メアリーに注目してみると、地味でめだたないような雰囲気を持ち、アンに振り回されてしまったようなメアリーが、人に対して常に誠実に向き合い、しっかりとした価値観を持ち、自分にとって何が一番大切なのかがわかっている女性として描かれているのがわかった。
ラスト、幼いエリザベスを抱きながら宮廷から去っていくメアリーの姿は毅然としていて美しい。
その後、メアリーは結婚し、田舎でエリザベスや自分の子供たちを育てながら夫とともに幸せに暮らす。
激しいストーリーの展開だっただけに、このエピローグにほっとさせられた。
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